ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】




『はい、もしもし。大橋です』

その声の印象は、とても若く、でも疲れているような陰りのある感じに思えた。

彩矢香が頭を使ったのなら僕は“心”、すなわち心理学に基づいた手法を用いよう。

【自己開示】
自分の素性や性格などの情報を相手に開示することで好感を持たれやすくなる。

『はじめまして。僕は水嶋辰巳といいます。都内の大学に通う22歳です。父親は弁護士をしていて、母は専業主婦。上にふたりの姉がいます。自分で言うのもなんですが、正義感が強く、将来は検察官になろうと思っています。もちろん結婚はしていません。彼女もいませんが、好きな人はいます。これから正直にすべてをお話ししますので、聞いていただけますか?』

『…………』

受話器を下ろさないということは、上々の滑りだしと見ていいだろう。

ちゃっかり彩矢香の瞳を見て、アピールも忘れない。

『僕らは12月15日金曜日の夜中に、ダルマさんが転んだをやりました。その日からもう3人が死んでいて、あと5人残っています。送られてきたルールの中に伊達磨理子という女性の名前があり、調べていった結果、この番号にたどり着きました。著者である冴野将輝さんが行方不明だということも存じていますが…』

『マサキです』

『……ぇ?』

『ショウキではなく、マサキです。その呪われし禁断のゲームで亡くなった友達の名前から、一文字ずつを取ったの』

『っ⁉』

僕の驚きに、遅れて皆も反応した。

『少しはあなたの役に立てると思うわ。終わらせる方法を知りたいんでしょ? で…』

『ぜひ! ぜひ、お会いして話を伺いたいのですが』

『……えぇ、構いませんよ。ただ、今は遠くへの外出を控えていて』

『ももちろん、こちらから行きます!』

僕は紙ナプキンを裏返し、女性の言う住所を書いて、通話を切る。



 
< 116 / 160 >

この作品をシェア

pagetop