ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



携帯をテーブルに置き、僕は心の中でガッツポーズをした。

「群馬⁈ 今から行くの?」

真っ先にメモを手に取った今夜の鬼がそうさせるのではない。

「あぁ。行くよ」

もちろん彼女に決まっている。

「じゃあ、私も!」

そう、彩矢香だ。

これは僕らふたりで成し得たこと。必ず食いついてくると予想していた。

「電話で訊いたらよかったんとちゃうん? どないしてわっわざ群馬まで。けったいな!」

「目を見て話さなきゃ掘り出せないものもあるだろ! お前に来てほしいなんて一言も言ってないし、ゲームに参加してないんだから、どうせ本心では他人事だと思ってんだろ?」

「なん゛やと!!」

「やめてよ!」

——……。

僕らのいさかいが、店内にのどかなメロディーを響き渡らせる。

怒りが収まらないのか、それともいたたまれなくなったのか、

「チッ。帰るわ」

ハーフダッフルを握りしめ、床を蹴るように歩きながら玄はファミレスを出ていく。

しめしめ。まずは、ひとり消えた。

「たっちゃん、あんな言い方しなくてもいいんじゃない? 元はゲン太が見つけてくれたんだよ」

「……だよな。最近まともに寝てないから、ヘンに苛立っちゃって……」

こう言えば、同じ境遇の彩矢香なら味方になってくれるはず。

「気持ちはわかる。しょうがないかもしれないけど、このままにしないでね」

「ぅん」

なんだかすべてがこの手の中で、僕の思うままに転がる。

そんな気がしてきた。



 
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