ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】




「キミはたった1分で沙奈ちゃんの信用を得た。素晴らしいよ」

それなりに地位のあるプロからお褒めを授かったが、すぐに沙奈は否定する。

「ちがうの。敬太と同じだから……」

「同じ?」

「水嶋さん、言ったでしょ? 自分は正義感が強いって。だから、信用できた」

僕の顔がカッと熱くなるのを、今度は使命感でときほぐす。

「それで、あの、こんなこと口にするのは子供じみているかもしれませんが……」

「ん?」

僕は意を決し、彼女に問うた。

「呪いは、本当にあるんですか?」

——……。

案の定、場は直滑降に冷えこむ。

「す、すみません! んなのあるわけ…」

「ある」

だが、と、沙奈に続き、

「あぁ。ある!」

なぜか宇治木までも。

「「…………」」

僕らは好きこのんで黙っているわけではない。

ただただ、言葉が出てこなかった。

沈黙のせめぎ合いの中、赤ん坊のシワくちゃな顔を、聖母のように麗しく見つめながら沙奈は言う。

「磨理子さんはもうこの世界を赦したはず。だけど、甦った。あなたの話を聞いて、その事実に、この子の父親が関わっていると私は思ったの」

「だから僕もここに来た」

なるほど。

こちらは呪いのゲームについて知りたくて、向こうは冴野将輝=大橋敬太を捜している。

どうやら、僕らは持ちつ持たれつの関係のようだ。

これは面白くなってきた。



 
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