ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



翌日。

廊下を歩くある男子生徒に目が釘付けになった。

なんと、幼なじみの上村君がいたのだ。

興奮さながら後をつけて、その背中にただ一言、

『ねえ!』

って言えばいい。本当にそれだけでよかったはず。

でも……、言えなかった。

遠目から気にかけていた長い時間が、言葉を詰まらせてしまったんだ。

もちろん、このことはそらへの手紙に書いた。

《運命かな? 運命だよね!?》

返事はすぐに来て、

《ありえない偶然!! 運命だよ! 絶対!!》

だって。

本当の恋なら、親友の後押しもあって気持ちに拍車がかかるはず。

だけど、意外にもそうじゃなかった。

短距離走が得意で陸上部に入ったこと。もうすでにたくさんの友達がいること。

私に気付いても、

『え?!』

って一瞬口にしただけで、話しかけてこなかったこと。

やっぱり上村くんは、遠目から気にかける存在。

好きは好き。だけどそれは恋じゃなく、友達としての好意だと気付いた1年目の春。



 
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