ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
さて、開桜でも友達を作ろう。
そんな隠れた意気込みも、なかなか芽を出さずにヤキモキしていた。
クラスにはすでにいくつかのグループができていて、完全に出遅れた模様。
特に、宝泉さんを中心にした数人の女子は、男子も交えて話すいわゆるイケてるグループ。
みんな可愛いし、頭も良くて家が裕福で、非の打ちどころがない。
故に、学年でも一目置かれるようになっていた。
私なんて……。
そんな人見知りのマイナス思考が、独りの時間をよりよく作り出していた。
友達ができないと親友に相談する。私にはちょっと気が引けて、そらにはそのことを言えず。
だけど彼女は文面で見る限り、なんだか楽しそうだ。
《バスケ部に入ったんだけどね、練習がキツイけどすごく楽しいんだ(^-^)でも、勉強との両立が大変そう⤵でもでもうち、がんばるから!夏休みにはさっちゃんにも会えるし⤴》
この手紙を見たとき、少し切なかった。
私とは正反対で充実していて、まったく同じで会いたくて。
東京と千葉の距離なら、いつだって行ける。
でも、目には見えない心の距離は、どんどんそらから離れてしまっているような焦燥感。
もしも、それがあからさま過ぎると、目に見えてしまうもの。
母は、私が開桜に入学してからすっかり変わってしまった。
毎晩家で大量にお酒を呑むようになり、これまでは絶対になかった深夜に出かけるという暴挙。
挙句の果てに、スナックで働きはじめ、朝帰りが日常化しはじめた。
いつも私を見送り、出迎えてくれた母が、今となっては全くの逆。
酔っぱらって無様に床で寝る様は、抜け殻でも亡骸にも感じられて、情けないやら心苦しい。
もしかしたら、私立中学に通わせる為の教育費という重荷が、母をこうも変えてしまったのかもしれない。
そう思ったら、体を張っている母に説教なんて、やはり養われている子供が口を出すことでもないわけで。
だから私は、母に喜んでもらいたくて、満点ばかりの答案を誇らしげに見せた。
しかし、1年前とは打って変わった反応ばかり。
もう私には興味と関心が無いみたいだった。
学校でも独り、家でもそう。
家族以外の心のよりどころは遠くにいるし、蓄積された寂しさは無意識にある衝動へと走らせる。
それは、食欲。
空腹を満たせば寂しさも紛らわせると潜在的に思っていたのだろうか。
私の体重は、募る寂しさに比例するように増えていった。