ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



教室だけのいじめが、その出来事で学校全体に伝染した。

体育の授業を拒否する生徒がほとんどを占め、プールの水を入れ替える事態にまで発展。

ほとぼりが冷めるまで一時、授業はおろか水泳部まで活動を停止した。

それからというもの、私が歩く廊下はたった一人の大名行列。自然に道が拓けて、皆が口々に「菌」と呼んだ。

このときが一番辛かったかな……。

女であることを恨んだ初めての瞬間だった。あんなにも心待ちにした夏休みは後にも先にもない。

信じていた。世間を賑わすニュースのように、ある程度時間が経てば、何事もなかったように消えると。

1カ月半もある。その間に次の興味が生まれて、元の関心が薄れ、私は今まで通り質素に中学生活を送れるだろう。

この希望を胸に抱いて、1日も休まずに学校へ行った。

休むのは、いじめに屈した証だから。

自分でもここまで【忍耐】という言葉が似合う人間だと思いもしない。

幸い、精神以外は傷つけられることなく夏休みを迎え、連続猛暑日更新!とか巷は騒いでいたけれど、私にとってはとても過ごしやすい日々だった。

3分の2を終えた時、今度は私自身が世間を賑わす。

人口上位1%の知能指数を有する非営利団体の会員になったからだ。

暫定値でIQ200。

現在最も偏差値が高い日本人と称して、それはもう取材が殺到。

だけど私はこんな性格だし、母もできるだけ人目に触れないように生きているから、すべてを断った。

むしろ、注目されることに頭を抱えてため息をついていたから、悪いことをしたなとすら思っていた。

それが功を奏して、2学期がはじまる頃には小康状態となり、以前のように慎ましく通学することができた。

不安でいっぱいだった廊下も、違った意味で道が拓けている。

——ザワザワ。
『ヤバイよね……』『アインシュタインより頭いいらしいぞ!』
『友達になっとけって!』
       ザワザワ——。

こんな様子だから、若干の期待はあった。

しかし、元々眼中に入れていなかったという強がりと、「菌」呼ばわりした後ろめたさで、声を掛けてくる者はおらず。

それに、このことはアイツらを焚きつけてしまう形になった。



 
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