ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】




「見たよ、箱根駅伝の6人抜き! あれはすごかった。テレビの前で手に汗握って応援したもん!」

「え、サヤって陸上系に興味あったっけ?」

「ううん、全然なーい」

「なんだそれ!」

「でもでも! やっくんの走ってる姿はかっこよかった。ホントに!」

「ぁ、ありがとう」

「そういえばキズ、まだ残ってるの?」

「……傷?」

「山で転んだじゃん!」

「あぁ~。少しね」

「見せて見せて!」

僕は気にしないようにしながらも、耳はそっちにずっと向いていた。

視線の先に、彩矢香を堂々と凝視する玄。

その目は、少し異様だった。

「タツミ。きっかけは始まりのはじまりだ。焦るなよ」

「え? リョウ、何言ってんだ」

「誤魔化すなって! 昔っからめんどくさがりなお前が、急に同窓会やろう!なんておかしいと思ったんだ。理由は……だろ?」

亮平はアゴで彩矢香を指す。

「…………」

黙秘権を行使する僕。


遡ること成人式の日。

はるかと偶然夜の街で出くわし、彩矢香と今でも連絡を取っていると聞いた。

『サヤ、2年後の秋には帰ってくるらしいよ!』

たしかに僕はそれを聞いて、この同窓会を企画したんだ。

「お前には全部お見通しか」

「なんせ、10年以上も友達してやってるからな!」

「フッ、偉そうに!」

そう。

すべては、彼女をもう一度手に入れるために……。



 
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