ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



宴もたけなわ、ひょんなことからある話題で持ちきりとなる。

「なぁ、オオヌキユキエって覚えてるか?」

「ぁ! それ、友達申請来た!」

「俺も」
「「私も」」

「経歴には開桜中学校って書いてあるんだけどさ、未だにどんなヤツだったか思い出せなくて」

――……。

沈黙。皆も僕と同じように、記憶のアルバムをめくっているのだろう。

すると、女にはとにかく見境のなかった山口基弘がヒントをくれた。

「俺、覚えてるよ」

そんなヤツが今年の春から医者になる。世も末。

「さすがグッさん! どんなヤツ?」

身長は150センチ程度。
それでいて太っている。俗に云う“ずんぐりむっくり”。
無口で、いつも本を読んでいて、肌は雪のように白い。

「だから、付いたあだ名は?」

途端、皆の頭上に電球が灯った様子。

「「ユキダルマ!!」」

「そう! 誰が言いはじめたんだか、すごくいいネーミングだよな」

「たしかに! だからフルネームで言われても思い出せなかったんだ」

いいや、違う。過去の汚点をほじくり返したくないだけ。

3年1組の生徒は当時、大貫幸恵をイジメていた。

もちろん全員ではない。僕だって、そんな低俗な行いに加担したことはないし。

でも、ほぼ全員が笑って見ていたのだから同罪だ。



 
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