ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



「チッ、変なヤツを承認したな」

「あたしも……」

「でもさ、よく友達になろうと思うよな? 俺らイジメてたのに」

――……。

“若気の至り”を今さら反省したのか、一瞬重くなる空気。

「てか、どうでもいいけど」

「昔の話だしね!」

どうやら違ったようだ。

僕は、心が汚いまま大人になったこいつらを、少し脅してみることにした。

「実はいるかもよ? この場に」

「ぇ゛⁈」
「ッ⁉」

――……。

宴席を見渡す一同。各々なりの焦りを見せる。






「なーんてね! 今日は来れないってさ」

「お゛い、タツミ! びっくりさせんなよ!」

今、安堵して息を吐いたヤツは、彼女に直接危害を加えた連中。

少なからず、罪の意識はあるのかもしれない。

その時。

「何の話で盛り上がってるんだ?」

「「ハタセン!」」

担任だった畑山が、僕たちのいるテーブルに顔を出す。

先生は最近、教員を辞めたと風の噂で聞いた。

「ハタセンは憶えてる? オオヌキユキエ」

「……ぁ゛、あぁ」

配慮の欠片もない直哉。畑山は途端に表情を曇らせる。

一番思い出したくないのは先生だろう。

イジメを認知していながら、トラブルのないクラスを演じようと、彼女を守ろうともしなかったのだから。

理由は簡単。

律儀に職員会議で報告しようものなら評価はガタ落ち。担任を外され、ついでに“ダメ教師”のレッテルを貼りつけるのがオチ。

大人の世界でも共通の常識。

正義など迂闊に振りかざすモノではなく、真面目で実直な人間ほど馬鹿を見る世の中なのだ。



 
< 29 / 160 >

この作品をシェア

pagetop