ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
「チッ、変なヤツを承認したな」
「あたしも……」
「でもさ、よく友達になろうと思うよな? 俺らイジメてたのに」
――……。
“若気の至り”を今さら反省したのか、一瞬重くなる空気。
「てか、どうでもいいけど」
「昔の話だしね!」
どうやら違ったようだ。
僕は、心が汚いまま大人になったこいつらを、少し脅してみることにした。
「実はいるかもよ? この場に」
「ぇ゛⁈」
「ッ⁉」
――……。
宴席を見渡す一同。各々なりの焦りを見せる。
「なーんてね! 今日は来れないってさ」
「お゛い、タツミ! びっくりさせんなよ!」
今、安堵して息を吐いたヤツは、彼女に直接危害を加えた連中。
少なからず、罪の意識はあるのかもしれない。
その時。
「何の話で盛り上がってるんだ?」
「「ハタセン!」」
担任だった畑山が、僕たちのいるテーブルに顔を出す。
先生は最近、教員を辞めたと風の噂で聞いた。
「ハタセンは憶えてる? オオヌキユキエ」
「……ぁ゛、あぁ」
配慮の欠片もない直哉。畑山は途端に表情を曇らせる。
一番思い出したくないのは先生だろう。
イジメを認知していながら、トラブルのないクラスを演じようと、彼女を守ろうともしなかったのだから。
理由は簡単。
律儀に職員会議で報告しようものなら評価はガタ落ち。担任を外され、ついでに“ダメ教師”のレッテルを貼りつけるのがオチ。
大人の世界でも共通の常識。
正義など迂闊に振りかざすモノではなく、真面目で実直な人間ほど馬鹿を見る世の中なのだ。