ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



思い出した。

康文と幼なじみであることを冷やかされたのが事の発端。後に、イジメの強要に至った。

「ヤスが⁈ そんなことあったかな……」

皆思い出そうとして眉をひそめると、直哉は声のボリュームをわざとらしく上げて続ける。

「教室に入ってきた大貫に足をかけたんだよ、な? 忘れたとは言わせねぇぞ」

「ッ……」

「あのデブ、派手に飛んでさ! みんなでダルマさんが転んだ!って、笑ったろ?」

「ぁ!」

「……たしかに、そんなことあったかも」

人生で一番最初に理解する方程式。


【イジメなければ、イジメられる。】


絶対にテストには出ないが、人間の永遠の課題だ。

康文は後者になるのを恐れ、幼なじみの彼女を陥れた過去があった。

「…………」

これには、彼も返す言葉が無い。

「あ~あ、落ち込んじゃったよー! ごめんな~」

直哉は康文のしかめっ面を覗きこんでニヤリと笑い、ズボンのチャックに手をかけながらトイレに向かう。


 

< 31 / 160 >

この作品をシェア

pagetop