ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
思い出した。
康文と幼なじみであることを冷やかされたのが事の発端。後に、イジメの強要に至った。
「ヤスが⁈ そんなことあったかな……」
皆思い出そうとして眉をひそめると、直哉は声のボリュームをわざとらしく上げて続ける。
「教室に入ってきた大貫に足をかけたんだよ、な? 忘れたとは言わせねぇぞ」
「ッ……」
「あのデブ、派手に飛んでさ! みんなでダルマさんが転んだ!って、笑ったろ?」
「ぁ!」
「……たしかに、そんなことあったかも」
人生で一番最初に理解する方程式。
【イジメなければ、イジメられる。】
絶対にテストには出ないが、人間の永遠の課題だ。
康文は後者になるのを恐れ、幼なじみの彼女を陥れた過去があった。
「…………」
これには、彼も返す言葉が無い。
「あ~あ、落ち込んじゃったよー! ごめんな~」
直哉は康文のしかめっ面を覗きこんでニヤリと笑い、ズボンのチャックに手をかけながらトイレに向かう。