ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
「なんで俺が⁈」
「ビビってねぇんだろ! いいから行け゛!」
「……チッ」
康文は恐るおそる歩を進め、黒い塊に近づく。
「ネコじゃない」
その第一声に、亮平が問い詰める。
「じゃあ何だよ!」
さらに一歩。
「ヒィ!」
あと数メートルという距離で、康文は腰を抜かす。
「どうした⁈」
「ヒ、ヒトだぁ゛ー!!」
奇声を上げながら、さも狂ったように後ずさる。
「逃げて!」
すぐさま彼に駆け寄る彩矢香。僕もその背中を追う。
「キャアァア゛―――ッ!!」
「な゛⁉」
そして、見てしまった。黒い塊の正体。
凍てつく地面にうつぶせで横たわる手足の無い女を。
「に……にげろ……」
“ソレ”は僕らに見向きもせず、大木を睨みつける。
おぞましい目は、この世の者ではないという恐ろしさを物語っていた。
「お前ら、ちゃんと説明せぇ!」
「逃゛け゛ろ゛ぉ゛ー!」
康文は立ち上がって、公園の出口へ向かって足を漕ぐ。
「彩矢香!」
僕は彼女の手を引き、戦慄の主から遠ざける。
「ッ……ハァ」
それから、後ろを一切振り返ることなく無我夢中で走った。
でも、すぐに見失ってしまう長距離界の新星。
「ハァ、ハァ――」
大通りの街灯に恐怖が汲み取られ、そこでやっと僕たちは冷静さを取り戻す。