ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
すぐさま襲われるのは、皆を置き去りにした後悔。
「みんなが来ない。……ねぇ、戻ろ?」
彩矢香は僕の腕を握って訴える。
「…………」
息を整えながら、しばし空を仰いだ。
舞い上がっていたはずの雪はもう、僕の頬へ落ちて滴に変わる。
これまで経験したことのない脅威は、すでに去ったのかもしれない。
しかしながらそのおかげで、せっかくふたりっきりになれたんだ。
頬の雪は溶けても、心にはまだ積もり積もった思いがある。
『きっかけは始まりのはじまりだ。焦るなよ』
ふと亮平の言葉が甦り、僕はもう一度彩矢香の手を取った。
「そうだな。戻ろう!」
と言いつつも、重い足腰。
周囲をこまめに伺い、“あの”女がいないか警戒した。
「さっきのって……幽霊かな?」
僕の肩口から声を震わせて問いかける彩矢香の横顔は、こんなにも寒い夜に、秘めた恋心を熱くさせた。
俄然、男らしさを見せようと燃える。
「あれが霊だとしても、彩矢香にはついてるだろ?」
「え⁉ っ、憑いてる⁈」
「……僕が!」
「たっちゃん……」
彼女の冷たい手のひらをキュッと握って、身を屈めながら公園を覗きこむ。
そこには……。
「誰もいない」
拍子抜けた僕の言葉を確かめるように、彩矢香も覗きこむ。
「ホントだ。みんなどこ行ったのかな……」
疑問なのはそれだけじゃない。
四肢の無い女はおろか、引きずった跡すらも消えている。
やはりあれは幻覚だったのだろうか。
そう思わせてしまうほど、何の変哲もない真夜中の公園が僕の視界に広がっていた。
「電話してみる!」
彩矢香はバーキンから携帯を取り出し、素早い操作で電話をかけた。
「ぁ、もしもし⁉ ミサコ、今どこ⁈」