ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
それから約3時間。午前7時前までふたりからの連絡を待った。
だが、一切音沙汰はなく。
「ファ~ア……もう朝だよ。帰ろ」
と、完全無防備なあくびをしながら美佐子は言う。
「そうだな。あいつら、帰って寝てるだけかもしれないし」
亮平は椅子の下に置いていたカバンを探りながら、いかにも気怠そう。
「みんな電車で帰るんだよね?」
僕らは茜の問いに相槌を打ち、ウエイトレスは慣れた手つきでレジを打つ。
「私は迎えの車が来るから」
「……そ。さすがはお嬢様」
僕に予期せぬタイミングで訪れた絶好のチャンス。
「なら、迎えが来るまで一緒に待ってるよ」
――……。
この一瞬の“間”には、皆の優しさが詰まっていた。
「じゃ、今度また予定合わせて飲もう!」
「次はクラス全員じゃなくて、うちらだけでさ」
「うん、そうだね」
僕と彩矢香を残し、駅のほうに歩いていく6人の男女。
普通なら、今日は楽しかったね!と言って笑顔で別れるはず。
なんとも後味の悪い同窓会に、見送る彩矢香の表情は固く暗い。
「…………」
こんなとき、一蹴するようなジョークでも言えたらと悔やむ僕。
「ありがとう、たっちゃん」
「え⁉」
彩矢香は僕の腕を引き、もう一度店内に戻る。
「中で待ってよ、寒いから。一緒に居てくれるお礼に、何かおごります」
「いいいよ! ほら、まだ暗いから。少し心配だっただけ」
苦し紛れの口実。内心は、目覚めが悪い冬の太陽に感謝していた。
「ふぅ~ん。少し、ね……」
いざふたりっきりになってドギマギする僕を、彩矢香はさらに追いつめる。
「ぁいやそれはだから!」
「クスクスッ――」
「その……フッ」
今やっと、視線を重ねて笑い合えた。昔のように……。