ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
第一段階の再会はクリア。
さて、次へと移ろう。
他愛もない会話の節々でタイミングを計り、この問いをぶつけた。
「そういえば、聖矢も元気にしてる?」
聖矢とは、彩矢香の歳の離れた弟のこと。
付き合っていた当時、僕を実の兄のように慕ってくれた存在だ。
彼女の気持ちを囲い込む足がかりには恰好の標的。
「久しぶりに会いたいな~。よく公園でサッカーしたっけ」
「…………」
この話題を振ってから、彩矢香の表情は徐々に沈みゆく。
「どうしたの?」
「……ぇ、ぁうん」
明らかに触れられたくない様子。
それを助けるかのように、黒い高級車がファミレスの前へ。
「迎えが来た」
専属の運転手は、機敏な動きで後部座席のドアを開けて待つ。
いかにも紳士的な所作。僕はその顔に見覚えがあった。
「朝早いのにごめんなさい」
「いえいえ。お嬢様、同窓会は楽しまれましたか?」
「えぇ」
「さようでございますか」
頭をぶつけないように気を配ったあと、僕を見る運転手。
「おや? あなたはたしか……水嶋様では?」
「はい。憶えてくれているなんて光栄です」
「当然でございますよ。お嬢様のご友人ですから」
嬉しさ余って、僕らは固い握手を交わした。
「ご立派になられて」
「そんな! あなたの方こそお元気そうでなによりです」
正直、さほど仲良くなかったクラスメイトに再会するよりも興奮している。
「たっちゃん。よかったら、家に寄ってく?」
「え⁉ いいの?」
「うん! お父様とお母様も喜ぶよ、きっと」
「そうと決まれば、さぁ乗ってください! 身体が冷えて風邪をひきますよ」
「ぁ、はい」
光沢のある革製のシートに腰を下ろし、懐かしい感触を手で確かめる。
走りだした車内。ふと彩矢香の手に触れ、とっさに離そうとしたが、彼女は微笑みながら指を少し絡ませた。
僕を見つめるその目は、思いが通じ合っていた頃に見せた瞳と同じだ。