ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
その日は、雨が降ったり止んだりを繰り返していたそうだ。
息子に傘を持たせていなかった母親は、小学校まで届けに家を出る。
しかし、正門で待っていても、通学路を辿っても聖矢の姿は見つからず……。
「ママ。これ」
戻ってきた彩矢香が、三つ折りになった紙を手渡す。
「見て。あの子を変えてしまった原因よ」
母親はそう言って、僕に受け流した。
「ゴクッ」
息を呑み、丁重に開く。
「ッ゛⁈ こ、これって⁉」
一文字ずつ切り貼りされたイビツな書体。
見た瞬間、驚愕が僕の延髄あたりを強く殴打した。
《息子ハ我々ガ預カッテイル。命ノ値段ハ金五百七十七万五千円。見張ッテイルゾ。誰ニモ知ラレルナ。警察ニモ報セルナ。サモナクバ、息子ノ命ハ無イト思エ!》
「そう。あの子は誘拐されたの」
「誘拐……」
これで分かった。
聖矢は僕に嫌悪したのではない。外へ出ることを露骨に嫌がったのだ。
「この脅迫状が届いた夜、犯人から電話がかかってきたわ」
屋敷はどこからか常に見張られており、怪しい訪問者がいればすぐ息子の首を箱に詰めて届けると脅す犯人。
「ということは、払ったんですね? 身代金……」
「えぇ」
それにしても不可解だ。