ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
犯人は父親の財力を知った上で凶行に走ったはず。
だが、要求はたったの5,775,000円。
安すぎる身代金。そして、中途半端な額。
宝泉グループのトップには“はした金”同等。
「あの子のことを第一に考えて、私たちだけで解決することにしたの」
「だから、私も帰ってきてから知った」
蚊帳の外にされたことが悔しいのか、彩矢香は下唇を噛むようにして言う。
「心配かけたくなかったのよ。あなた、弟思いの優しい娘だもの」
彼女の髪を撫で、手のひらをギュッと握る母親。
「絶対、この身代金の額に誘拐した理由があると思うんです! 何か無いですか!?
仕事上のトラブルとか」
僕が興奮ぎみに言うと、ふたり共々目を丸くした。
「ぁ……」
瞬時に言いたいことを察し、口をつぐむ。
会社のトラブルを請け負うのは顧問弁護士の仕事。すなわち、知っているとすれば僕の父になる。
突如として浮き出た点と点。今はただ、線に繋がらないことを祈ろう。
「事件の後、あの子は部屋に閉じこもるようになってしまったの。でもタツミ君なら、前の明るかったあの子に戻せるような気がする」
来た。今がこの家族に溶けこむ千載一遇のチャンス。
「僕、聖矢と話してみてもいいですか?」
すると、母親はハンカチーフで涙を拭いながら深く頷いた。
「待ってよ!」
だが、すぐさま異議を申し立てる長女の彩矢香。
「家族でも無理なのに……私は、自分の意志で外へ出られるようになるまで、そっとしといてあげたほうがいいと思う」
たしかに彼女の考えは正しい。同時に、それが盲点でもある。