ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】




――ゴンッ、ゴン!!

「たっちゃん!」

彩矢香が強い力で扉を叩く。

「た、たつにぃ! 絶対お姉ちゃんに言わないで! お願い……」

聖矢は訊かれないから話さなかったのではない。

自分を誘拐したのが姉の友人だと知っていたから話せなかったのだ。

この秘密、利用できる。

「あぁ。男と男の約束だ」

――ドンドンッ、ドンッ!!

「アカネからの電話! 大変なことになってるの!」

急を要する声色、僕は部屋のドアを開けた。

「どうした⁉」

彼女の切迫した表情を見ただけで、最悪の事態が現実味を帯びる。

スッと差しだされた携帯電話、おもむろに耳へ当てると。

『タツミ、聞こえる⁈ 直哉が……ナオヤが、死んだの!』

『え⁉』

今朝の6時過ぎ、直哉の遺体が見つかったらしい。

発見現場の近くに落ちていた携帯の着信履歴から、最後に通話をしたのが茜だと発覚。

『それで……警察の人が事情を訊きたいって。もしかしてうち、疑われてるのかな……』

『僕も一緒に行くよ! 今どこ?』

まだ家にいると言う彼女に、迎えに行くと告げて電話を切る。

「私も行く! 車の鍵取ってくる!」

携帯を返した時、彩矢香はそう言った。

聖矢には日を改めると告げ、ジャケットに袖を通しながら靴を履き、玄関を飛び出す。

まるで焦らすように、ゆっくりと開く自動制御の門。

軽快なトークを飛ばすラジオのDJがあまりにも場違いなほど、車内は重苦しい空気に包まれていた。



 
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