ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】




発端は、朝方にかかってきた一本の電話。

「相手は大貫さんだったよ」

「大貫⁈」

【『開桜中学校のプールへ行け!』】

彼女はそれだけを告げ、一方的に通話を切ったらしい。

妙な胸騒ぎを覚え、言われた通りの場所へ行ってみると……。

「だ、大丈夫ですか⁉ 先生!」

話の途中で目頭を押さえ、何やら意識が朦朧としている様子。

僕はすぐさま肩を抱き、近くの長椅子に座らせた。

震える指先がジャケットの内ポケットに伸び、オレンジ色のケースに入った錠剤を取り出す。

「発作ですか⁈」

「お水、持ってくるね!」

「彩矢香。頼む」

ほどなく、差しだされた小さな白い紙コップに張られた冷水と錠剤を、先生は一気に体内へと流しこんだ。

僕と彩矢香は平静を保てるようになるまで傍で待つ。

「すまない。一年前からこれが手放せなくなってね……」

「それであの、学校のプールに何が?」

急かす僕に対し、息を詰まらせながら再度語りだした。

「私が行った時にはもう、尾堂君は濁った水の上に浮いていた。うつぶせの状態で」

しかも、それだけじゃない。

「手と足をバラバラにされ゛てね……」

「ッ⁉」

僕の感情を司る五線紙に戦慄が並び、身の毛もよだつ恐怖の旋律を奏でる。

「彼女は私に復讐しているんだ。昔のように、何も出来ない無力さを痛感させようと」

そう嘆いて、自らを責めるように、何度も額を叩く。

「考えすぎですよ! だってあれからもう5年…」

「いいや!」

先生は僕の言葉をかき消し、大貫の意思を代弁する。

「プールサイドに血塗りの文字で書かれていた。“イジメの末路”、とね」

「……イジメの末路?」



 
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