ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
いつも僕の後ろを金魚のフンみたいについてきたアイツが、何も言わずに忽然と姿を消した。
それは、建物の中に収まっていられない違和感。
「リョーウ!!」
歩道の縁石に立って、大声で呼んでみる。
――……。
だが、世界に独り取り残されたような静寂。
今は夜中の3時半前。当然。
もう一つ向こうの表通りは、コンビニや大型量販店が立ち並ぶメインストリート。
酔った拍子に、フラッと足が向いたのだろうか。
「リョーウッ!!」
そんな都合の良い解釈を頭の中でまとめ、猫も歩かないような都会の隙間まで隈なく見ながら、精一杯声を張る。
幸いにも通りは、東京オリンピックに向けた道路拡張工事の真っ最中。灯りは十分すぎるほどあった。
「オイ゛ッ、にいちゃん! 何やってんだ!」
するとどこからか、ドスの利いた怒声が。
「危ないから触るんじゃねーよ゛!!」
発信元を特定。捉えたのは……。
「リョウ?」
――ブロッ、ブオオォ――――ン!!
「ッ⁉」
彼の手に、アスファルトを切削するためのハンドカッターが握りしめられている。
「ひぃいいぃ゛」
高速回転する刃が高く振り上げられ、恰幅のいいヒゲ面の現場作業員が恐れをなす。
「リョウ⁈ 何やってんだ!」
すぐさま走って声を掛けると、僕を見た彼はニヤリと嗤う。
今まで一度も見せたことのない不敵な表情。
「そんな物騒なモノ、早く下ろせ!」
――ブオオォ――――ンッ。
けたたましいエンジン音の威嚇。辺りは騒然としていた。
「さすがにマズいって……警察沙汰になるぞ!」
――ブオオォ――――ンッ。
「おいっ、早く下ろ゛せよ!」
亮平は魂が浮ついているかのようにユラユラと揺れている。
はたまた言葉が通じないのか、首を傾げているようにも見えた。
とにかく、その目……。
いつもの彼じゃないのだけはたしかだ。
「な゛!?」
次の瞬間!!