ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



「今のって……」

「……はるか?」

声がしたのは真逆の方角。そこにあるのは、エレベーター。

「行こう!」

「うん」

非常階段から建物の中に戻って、いくつもの表札の前を駆け抜けた。

目指す場所がすぐそこに迫り、

「ストップ!」

僕は慌てて彩矢香の身体を腕で制止する。

「あ、あれはなんだ……」

電球が切れる間際で、点滅して照らされる不気味な廊下に、何かが転がっていたからだ。

恐るおそる近付くと、それは。

「う゛! ッ」

人間の足だった。細くて白い女の脚、2つ。

「誰か、誰カ゛ー……オ願い゛、た゛ズ゛ケて゛」

さらに、必死で助けを乞う声も。

僕は、無惨に転がる“膝から下”をまたいで、エレベーターを覗きこむ。

「「はるか!!」」

いた。カゴの中で、夥しい量の血を流す彼女が。

「ぃ゛今、助けてやる」

込みあがる吐き気を抑えながら、僕が近付いた瞬間。

――ガタンッ!

扉が開いたまま、カゴは目線の高さまで独りでに動く。

「クソッ!」 

現実とは理解しがたい光景の連続。

それでもまだ心は折れていなかった。

「はるか、見えるか⁉ 手を出せ!」

僕は精一杯背伸びをして、ここにいることを報せる。

――ギギギ、ガギギッ。

神経を逆撫でする金属の擦れる音は、まるで動きたくてウズウズしているように聴こえた。

よって、一刻の予断も許さない。



 
< 93 / 160 >

この作品をシェア

pagetop