ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
「今のって……」
「……はるか?」
声がしたのは真逆の方角。そこにあるのは、エレベーター。
「行こう!」
「うん」
非常階段から建物の中に戻って、いくつもの表札の前を駆け抜けた。
目指す場所がすぐそこに迫り、
「ストップ!」
僕は慌てて彩矢香の身体を腕で制止する。
「あ、あれはなんだ……」
電球が切れる間際で、点滅して照らされる不気味な廊下に、何かが転がっていたからだ。
恐るおそる近付くと、それは。
「う゛! ッ」
人間の足だった。細くて白い女の脚、2つ。
「誰か、誰カ゛ー……オ願い゛、た゛ズ゛ケて゛」
さらに、必死で助けを乞う声も。
僕は、無惨に転がる“膝から下”をまたいで、エレベーターを覗きこむ。
「「はるか!!」」
いた。カゴの中で、夥しい量の血を流す彼女が。
「ぃ゛今、助けてやる」
込みあがる吐き気を抑えながら、僕が近付いた瞬間。
――ガタンッ!
扉が開いたまま、カゴは目線の高さまで独りでに動く。
「クソッ!」
現実とは理解しがたい光景の連続。
それでもまだ心は折れていなかった。
「はるか、見えるか⁉ 手を出せ!」
僕は精一杯背伸びをして、ここにいることを報せる。
――ギギギ、ガギギッ。
神経を逆撫でする金属の擦れる音は、まるで動きたくてウズウズしているように聴こえた。
よって、一刻の予断も許さない。