ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



「ほら、手に掴まれ゛! そこから引きずり出すからっ!」

「た゛……辰巳……」

はるかは息を詰まらせながら手を伸ばす。

その指先が触れたと同時に、僕は渾身の力で引っ張る。

――ズズズズッ。

一回。

――ズズッ。

二回目でやっと、彼女の頭が見えた。

「もう少しだ! 行くぞ、せ゛ー!!」

刹那、

――ガダンッ!

はるかを乗せたままのカゴが、すさまじい勢いで落下。

「ッ⁉」

――ビッシャ。

骨肉の弾ける音が一瞬、僕の顔面に飛び散る液体。

「キイヤ゛ァア゛アァーーッ゛!」

加えて、彩矢香の悲鳴を一身に浴びる。

「ぁ゛、ああ゛ぁあぁ……」

きつく握った手のひらの先、はるかの“肘から上”は血の噴出口。

四肢以外の頭部と胴体は視界から忽然と消えた。

「う゛あ゛ぁあ゛――はるかぁ゛――」

僕の雄叫びが、煙突状に伸びるだだっ広い空間でこだまする。

それさえも飲みこむように、扉は静かに閉ざされた。

「救急車、よ゛、ばなきゃ……」

彩矢香の手に握りしめられている携帯と冷静さのカケラ。

たしかに、“死”を決めつけるのはまだ早い。

「僕は下に行く!」

「私も!」

まだ現実に立ち向かう余力はあった。

しかし、惨劇を見せつけたエレベーターを使う勇気はない。

僕は再び非常階段へと走り、後ろにつく彩矢香の口からは、洩れる荒い吐息としどろもどろの救急要請。



 
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