ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
しかし、目には見えない恐怖心が立ちはだかる。
それほど長くないエレベーターまでの距離が、どんな坂道よりも険しく感じて息苦しい。
オレンジ色の電光が示す数字は左が6、右は1。
はるかを乗せたまま誤作動を起こしたのは右側だが、何事もなかったかのように1階で佇んでいた。
「彩矢香はここにいろ。見ないほうがいい」
途中で彼女を制し、上下の矢印が書かれたボタンの前まで行く。
――……。
「ゴクッ」
深く息を呑み、覚悟を決めた。
はるかを助けられるのは僕らだけだから。
――ッ。
指、というより爪。
触れた瞬間、ボタンが発光し、ゆっくりとドアが開く。
「ぇ!?」
一目、床面積のほとんどを占める鮮血。
「なんで?!」
一粒、天井から滴る赤い雨。
「ウ、ソだろ」
一筋、壁に飛び散った血潮。
「いない……」
あるのは痕跡だけで、はるかの姿は無かった。
ひとたび混沌の奥底へ墜ちた僕は、めまいがしてその場にへたりこむ。
そこに“時間”という概念は存在しない。