ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】




肩を叩かれ、ハッと我に返る。

「しっかりして! どこをケガしたの?!」

目の前には緊迫した表情の救急隊員。

はるかの血で染まった服を捲りあげて傷口を探し、

「この血は? ケガ人はキミ!?」

と彩矢香を見る。

――……。

彼女は無言で首を振り、ダークブラウンの髪が激しく揺れた。

「ここにいたんです」

僕は這いつくばって、エレベーターのボタンを押す。

「な゛?! こ、これは!?」

カゴの中の惨状を目の当たりにした隊員。

血に慣れた人間であっても、常軌を逸した光景にたじろぐ。

「でも、消えました……」

その時。

「タツミ!」

僕を呼ぶ声がして、とっさに振り返る。

「や……ヤス?」

救急車のヘッドライトにたかれて見えたのは、はるかの自宅の住所を知らないはずの彼だった。

――タッ、タッ、タッ。

「なんで、どうしてお前がここに?」

「それは……」

康文は説明に困りながら、騒然とする周囲を見回す。

「てか、はるかは一緒じゃないのか?」

「それが……いなくなったの」

彩矢香は泣きながら、彼の腕をすがるように掴む。

このやり取りに、隊員の視線は右往左往。

「ヤス!」

すると、今度は彼を呼ぶ声がした。僕にはもう何がなんだかさっぱり。

「グッさん……」

山口は僕たちを見るなり身を引きながら驚く。

「ぉ、お前らがいるってことは、このマンションってまさか……はるかの!?」

「あぁ。そうだよ」

次に、康文とまったく同じ問いを僕らにぶつけてきたが、リアクションには大きな差があった。

「はるかがいなくなったんだな?! 多分それは畑山の仕業だ……ヤス、行くぞ!」

「ぇ?!」

「いいから来い! あいつが動きだしたんだ!」

僕らを話の蚊帳の外にして、建物から出ようとするふたり。

「待てよ!」

当然、衝動的に呼び止めた。



 

< 97 / 160 >

この作品をシェア

pagetop