ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
肩を叩かれ、ハッと我に返る。
「しっかりして! どこをケガしたの?!」
目の前には緊迫した表情の救急隊員。
はるかの血で染まった服を捲りあげて傷口を探し、
「この血は? ケガ人はキミ!?」
と彩矢香を見る。
――……。
彼女は無言で首を振り、ダークブラウンの髪が激しく揺れた。
「ここにいたんです」
僕は這いつくばって、エレベーターのボタンを押す。
「な゛?! こ、これは!?」
カゴの中の惨状を目の当たりにした隊員。
血に慣れた人間であっても、常軌を逸した光景にたじろぐ。
「でも、消えました……」
その時。
「タツミ!」
僕を呼ぶ声がして、とっさに振り返る。
「や……ヤス?」
救急車のヘッドライトにたかれて見えたのは、はるかの自宅の住所を知らないはずの彼だった。
――タッ、タッ、タッ。
「なんで、どうしてお前がここに?」
「それは……」
康文は説明に困りながら、騒然とする周囲を見回す。
「てか、はるかは一緒じゃないのか?」
「それが……いなくなったの」
彩矢香は泣きながら、彼の腕をすがるように掴む。
このやり取りに、隊員の視線は右往左往。
「ヤス!」
すると、今度は彼を呼ぶ声がした。僕にはもう何がなんだかさっぱり。
「グッさん……」
山口は僕たちを見るなり身を引きながら驚く。
「ぉ、お前らがいるってことは、このマンションってまさか……はるかの!?」
「あぁ。そうだよ」
次に、康文とまったく同じ問いを僕らにぶつけてきたが、リアクションには大きな差があった。
「はるかがいなくなったんだな?! 多分それは畑山の仕業だ……ヤス、行くぞ!」
「ぇ?!」
「いいから来い! あいつが動きだしたんだ!」
僕らを話の蚊帳の外にして、建物から出ようとするふたり。
「待てよ!」
当然、衝動的に呼び止めた。