ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
切れてしまった。母にじゃない。首の皮一枚のこと。
意外と簡単に砕けるものなんだ。死にたいという願望から、死のうと決意するまでの壁なんて。
あっけない。怒りや苦しみさえ、すでにもう冥途の土産。
次の日、私は家を出る。おでかけに、あんなに大量な荷物は要らない。
ずっと考えていた。もし死ぬとしたら、どういう死に方をしようって。
母に迷惑をかけず、そしてせめてもの自己主張ができる死に方を。
答えはすぐに見つかった。
住み込みの寮があって、学歴不問。操業を開始したばかりで、最新設備が整った火葬場。
自分で棺を用意し、中からハッキングして稼働させ、焼身自殺を行う。この計画なら、双方を達成できる。
そのままの足で行ったから、面接を担当した職員は面食らっていた。
私の情熱とやる気と決意にほだされて、即合格と入寮を許される。
棺を買うお金なんて無いし、どうせ買うなら高貴な物がいい。真面目に働き、最低限の生活費以外をコツコツ貯めていた。
私にとっての給料3カ月分は、自分のために最期を彩る棺だ。
女としての幸せはもう要らない。望めば、根こそぎ引き裂かれると知っているから。
誰にも心を開かなかった。一人だけ十代だったのが後押しして、誰も心を開いてこなかった。
毎日執り行われる火葬の儀に訪れるのは、故人を偲ぶたくさんの家族・親戚・友人・知人。
私とは無縁の光景すぎて、心が揺らぐことや、涙のひとつも出やしない。
それに、
『先週は結婚式で祝儀だろ。今週は香典で参っちゃうよ』
こんな話を何度も耳にしたら、独りで死ぬのが幸せだとさえ思う。
しかし、自殺を決行したあとのビジョンを実際に目の当たりにしてしまうと、その決意が揺らいでしまった。