ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
この日訪れた遺族3人は、今までに経験した火葬の儀と異なっていた。
まず、故人に遺影がない。
『よっぽど生前に慕われていなかったんだろうね。たまーにいるのよ』
ご遺体を焼却中、デリカシーの欠片もない清掃員のオバちゃんが、通りすがりにそう言った。
きっと、私が死んだときも同じことを言いふらすだろう。
広大な採骨室に入った男女は、私とそう歳が変わらないぐらい。
特に印象に残ったのは、そのふたりが同じ素材の手袋を片方だけにしていること。
もうひとりは無精ひげを生やした30代の男性で、死に慣れているのかふたりの手前、涙一つ流さずに毅然としていた。
そもそもこの組み合わせは、遺族なのかも疑問だ。
作法を知らないふたりに教えてあげながら、私は後ろで3人を見守っていた。
少ない背中に漂う哀愁。泣いている女の子が一瞬、そらと重なる。
私が死んだ後の現世はこうなるだろうと、彼らが教えてくれたのだ。
そのとき、ここで働くようになって初めて、私の頬にも涙が伝う。
決意したはずの大きく心が揺れ、生と死の狭間で行き場を失って泣いた。
なぜ、顔も全然ちがうその女の子がそらに見えたのか。
もし意味があるとしたら、私のすべきことの答えを持っているのは、有村そらなのかもしれない。
次の日曜日、千葉へ向かった。
もう勇気は必要ない。最後に顔を合わせた日から、とても長い時間が経ったから。
久しぶりに生まれ育った故郷へ降り立つと、幼き記憶がフラッシュバックしてくる。その地図を頼りに町を散歩した。
変わらない喫茶店に
上村くんと遊んだ公園
毎日通った小学校
どんな答えが出ようとも、思い出の地を訪れたのは間違いじゃない。そう思えた。