ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



追いつめる側と追いつめられる側。

中学時代とは真逆の状況に、自然と頬がほころぶ。

——コツッ、コツッ。

『ど、どういうこと⁈』

『あなたにはこれから死んでもらう』

『ッ⁉ な何すんのよ! 離してっ゛!』

そこで仲間が彼女を押さえつけた。

『大貫幸恵としてね』

私は、ゆっくり包帯を取っていく。

95%。

医師が自慢げに言っていたその成果をまざまざと見せつけた。

『そ……ワ゛、私?!』

鏡を見ている気分だろう。目の前に、自分と瓜二つの女が立っているのだから。

夢だと思っているのか、彼女は何度も深くまばたきをする。

『あなたの命だけじゃ足りないの。私が受けた苦しみを晴らすには。わかるでしょ? 私が誰だか』

『……その声、もしかして……ダ、ダルマ⁈』

失礼な女。あの頃の私なんて、どこにもいないのに。

『くっ……こん゛なことして、ただで済むとぉ……ッ』

よくあるシーンなら、これから懺悔の時間だ。

しかし、それすら与える気もなく、仲間が首筋に筋弛緩剤を打ちつけた。

お嬢様にはそぐわない安物の棺。その中に、生きたままの彼女を収容する。

死を哀しむのは、これまで愛用していたPCだけ。

『ゲンを担ぎたいから、もう少し待ってね』

目を開けていても動かない。ボロボロと涙を流していたけれど、それは単に瞳が乾いているからだと蓋を閉じた。

二代目のPCを開き、棺の中を遠隔操作する。

『いよいよですね……』

『抜けるなら今よ。もう後戻りできないから』

3人は固唾を飲んだ。私もある程度の覚悟はしていた。

自分を殺すより、人を殺すほうがはるかに罪深いから。

『いいえ。私はあなたと共に生きていきます』

『……ボクも』

『せや! これが新世界の第一歩になるんやな?』

『えぇ』


3月3日 午前3時3分


宝泉彩矢香は、大貫幸恵として灰になった。

そして私はこの瞬間から、宝泉彩矢香として生きてゆく。



 
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