ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
秋には帰国し、すぐに宝泉賢矢の秘書となる。
『あなた、変わったわ……』
母親の香澄に顔を見つめられてそう言われたとき、かなりゾッとした。
『人への接し方とか、言葉遣いも。それに、料理までするなんて……違う国の文化に触れたのがいい刺激になったのね!』
どうやら、中身が別人になっていると勘づいていないようで、心底ホッとする。
私が何故キッチンに立つのか。花嫁修業なんかではない。
早期に宝泉グループを乗っ取るためだ。
父親の食事だけ、毎日微量の水銀を混ぜて食べさせた。
いずれ中毒症状が出て、社長の座はおろか、この世までも退くことになるだろう。
姉弟を人間のクズに育てたのだから、親にも責任を取ってもらうべき。罪の意識など皆無。
あとは主治医に年収分の報酬を握らせ、死因を“原因不明”にすれば完璧。
一人息子は誘拐のショックでひきこもり。母親に経営のノウハウは無い。
よって、長女である私にその実権が回ってくる。
少なくとも2年は社長を務め、ある人物に譲渡するつもりだ。
最終目標は世界的な実業家になることではなく、女性初の内閣総理大臣。
賢矢が水面下で、政界進出のために基盤を整えているのは知っていた。それさえも大いに利用させてもらう。
このように、二極化する計画の片方は、まだ潜在的だが順調だった。
もう一方は、季節が変わればすぐに実行だ。
『これからのやり取りはあなたに託す』
『はい!』
『手順、憶えた?』
『承知しています。最初の仕事は、同窓会の最中に例のやつを一斉送信ですよね?』
『そうよ』
『任せてください! 私が女神様に成りきってみせますから!』