ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
2017年12月15日
ほんの少し店内の様子が伺えた瞬間、当時の教室の雰囲気がフラッシュバックして、突如吐き気に襲われた。
トラウマというやつだ。
近くにあったコンビニのトイレに駆け込み、からっぽの嗚咽を繰り返す。
初めから鏡を見ればよかった。
私はもう、私じゃないという自信。嫌いな顔がそこにあって、込み上がる憎しみは云わば平常心。
山口と話した時は、奥歯で舌を強く噛んで、あの初秋の痛みと悔しさをかき消す。
それでも、上村くんの大人びた姿を見て、純粋に感動する私。
知りもしない過去の関係を掘り返そうとする水嶋くんの傍にいるより、断然彼と話をしたかった。
『見たよ、箱根駅伝の6人抜き! あれはすごかった。テレビの前で手に汗握って応援したもん!』
『え、サヤって陸上系に興味あったっけ?』
『ううん、全然なーい』
『なんだそれ!』
『でもでも! やっくんの走ってる姿はかっこよかった。ホントに!』
『ぁ、ありがとう』
そのすぐ後に、あの男が私たちのテーブルに顔を出した。
なにやら後悔を滲ませていたが、私をユキエと認識していたからまったく響いてこない。
口にしたつもりはなかった。しかし、感情がそのまま放たれる。
『なんか調子いいこと言ってたけど、担任のくせに名前もちゃんと憶えてねぇじゃん』
上村くんだ。彼は正真正銘の後悔を見せてくれた。
とっさに携帯を探す。送信リストから上村くんを除外する指示を出すために。
だが、座布団の下に忍んでいたスマホを見つけた時にはもう遅くて……。
特に動じることはない。ゲームに参加させなければ。
それとなく外そうとしたが、大人になったのは外見だけ。
意地っ張りで負けず嫌いで恥を嫌うのは今もなお健在で、結果的に私と小指を繋いでしまった。
この問題は来るべく時に解決するつもりだ。