ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



『で、私の正体を知ってどうするの?』

とりあえず、この場をしのぐしかない。

『簡単なこっちゃ。オレと結婚せぇ』

『は⁈』

『冗談やないで。誰にも知られたなかったら、オレを宝泉家の婿養子にするんや』

なるほど。財産目的か。

『わかったわ』

『ホンマにか? ほんなら、オレを抱きしめてみ』

『…………』

『フィアンセやろ? できんことあるかい!』

玄は黒く変色した歯茎を見せてニヤつく。性根と同じで腐っている。

『早よせぇ! タツミや家族に言うてまうぞ!』

仕方ない。

私は身を切る思いで、ヤツの背中に手を回す。

『フフッ、ええ子や。ほな、今から初デートに行くで』

『ぇ?』

山口と連絡を取っていた玄は、これから私と空港で落ち合うことを知っていた。

その時、

『やっぱ……』

最悪の状況を水嶋くんに見られてしまう。

アイツは調子に乗って、彼の目の前でキスをする。

初めてだった……。

私はやはり母の子。愛情に基づいてるはずの行為を人にひけらかし、恋をしても絶対に結ばれない、悲運な星の下に生まれたんだ。

その現実を直視したくなくて、不快な口唇が離れるまで目を閉じていた。

彼が先に出て行った玄を鬼の形相で追いかけ、部屋でひとりになった私は、すぐに仲間へ電話をかけた。

『承知しました。機会を窺って殺害します。我々の犯行だと悟られないようにですね?』

『えぇ。頼んだわ』

『ちなみに、アレはもう仕込みましたか?』

彼女が言う物。それは、宝泉聖矢に対する新たな脅迫文。

水嶋くんと再会し、部屋から出てくるようになっていた。

このままだと外に出てしまうのも時間の問題。

仲間の顔を見ているし、将来的にも永遠に口を閉ざしておいてほしい存在だ。

『いま眠ってるみたいだし、家を出る前に置いておくわ。それじゃ、空港で』

『はい』



 
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