ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
携帯からあの音が聴こえたと同時に、PCの映像の端で黒い影が蠢く。
鬼を絶対に逃がさない最恐の“子”がすでにいた。
『逃げて!』
その願いむなしく、瞬間的な速さで前進を繰り返す。
あと数メートルまで迫ったところで、上村くんは受け取った鏡を向ける。
しかし、カノジョは消えない。
私は見てしまった。
家の中に戻ろうとする彼を追いかける水嶋辰巳が笑っているのを。
懸命に鏡のある場所を捜していたが、最後はあのバスルームへ。
鏡が粉々に割れているのを見て、上村くんは絶望を背中で語る。
すると、アイツはドアを閉めて彼を閉じこめた。
必死で助けを求める影。それを愉しむかのような横顔。
数十秒の攻防を経て、上村くんはスッと奥に消えてしまった。
『ヤメテ……』
人生のドン底から、また人を信じてみたいと思うようになったのに。
『お願い゛……』
まさか、伊達磨理子を疎ましいと感じる日が来るとは。
『ッ⁈』
バスルームの天井から黒い塊が降ってきた。
その正体を知っているから、PCを閉じて走りだす。
『今、どこ⁈』
『ぇっと……家まではあと15分くらいです』
『とにかく急いで!!』
カノジョが身体に触れた時点で負け同然。間に合わないのはわかっていた。
もしかしたら、いやきっと、私という存在が抑止力になれる。
そう信じてハンドルを握った。すぐにエンジンをかけて急発進。
ゲートを開けるのに手間取っていると、
『どこ行くの! すぐに戻って!』
裏口から、香澄が私の車に向かって叫んでいた。
『容体が急変したのよ! 早く!!』