ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



携帯からあの音が聴こえたと同時に、PCの映像の端で黒い影が蠢く。

鬼を絶対に逃がさない最恐の“子”がすでにいた。

『逃げて!』

その願いむなしく、瞬間的な速さで前進を繰り返す。

あと数メートルまで迫ったところで、上村くんは受け取った鏡を向ける。

しかし、カノジョは消えない。

私は見てしまった。

家の中に戻ろうとする彼を追いかける水嶋辰巳が笑っているのを。

懸命に鏡のある場所を捜していたが、最後はあのバスルームへ。

鏡が粉々に割れているのを見て、上村くんは絶望を背中で語る。

すると、アイツはドアを閉めて彼を閉じこめた。

必死で助けを求める影。それを愉しむかのような横顔。

数十秒の攻防を経て、上村くんはスッと奥に消えてしまった。

『ヤメテ……』

人生のドン底から、また人を信じてみたいと思うようになったのに。

『お願い゛……』

まさか、伊達磨理子を疎ましいと感じる日が来るとは。

『ッ⁈』

バスルームの天井から黒い塊が降ってきた。

その正体を知っているから、PCを閉じて走りだす。

『今、どこ⁈』

『ぇっと……家まではあと15分くらいです』

『とにかく急いで!!』

カノジョが身体に触れた時点で負け同然。間に合わないのはわかっていた。

もしかしたら、いやきっと、私という存在が抑止力になれる。

そう信じてハンドルを握った。すぐにエンジンをかけて急発進。

ゲートを開けるのに手間取っていると、

『どこ行くの! すぐに戻って!』

裏口から、香澄が私の車に向かって叫んでいた。

『容体が急変したのよ! 早く!!』



 
< 152 / 163 >

この作品をシェア

pagetop