ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



痛みに悶える激しい吐息。それでも、すぐに上村くんだとわかった。

『やっくん⁈』

『さ……サチエ゛……ッ』

『きっと大丈夫だから! 絶対に助かる!』

根拠なき感情論。大切な人を亡くすということは、自我を失くすということ。

『サチエ。生きててくれてありがとな゛。これ゛ッう゛……から、傍にいて償ってい゛ける』

『ぅん゛。一生かかるかも゛よ?』

『あ゛ァ゛。一生かけて償う!』

『やっくん……』

砂で作った城の上に、永遠の旗が掲げられた。

だけどそれは、幼い頃に遊んだ公園の砂場じゃない。

時間と共に波が削り取る砂上の楼閣。

『俺は……お前が……』

『……ゃ、やっくん?』

突如、鼓膜が静まり返る。

『どうしたの⁈ ねえ!!』

『……脈が、ありません』

『そん゛な……』

午前3時33分。

上村くんが死んだ。最期の言葉を聞かせずに。

よくわかった。伊達磨理子は奇跡を許さない、と。

薄暗い廊下で独り、私は慟哭にきつく抱きしめられた。

『あの……このまま病院に向かいますか?』

『…………』

嗚咽を必死に押し殺し、平静を装って指示を出す。

『当初の計画通りにお願い。但し、そのままの状態で』

『箱根ですね?』

『そうよ』

私への悪意になぞって、遺棄現場はあらかじめ決めていた。

しかし、今となっては意味がまったく違う。

彼が一番輝いていた場所に連れて行きたい。

そうすれば、たとえ悲劇として語り継がれても、決して忘れない伝説になる。

山の麒麟は、私や多くの人々の心の中で永遠に生き続けるのだ。



 
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