ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
何が起こっているのか。美佐子の声がしなくなった。
今、唯一の頼りはホームレスの男だけ。
「キミ、だ大丈夫かい?」
肩に手をかけられた瞬間に金縛りは解け、同時に明かりがつき、自動ドアも開いた。
「「ミサコ!」」
すぐさま後ろを振り返ると、立ったまま呆然と佇む彼女の姿。
見ているのは、扉が全開する乾燥機。
「ね、ねぇ……ミサコ?」
彩矢香はその身体に触れるのを躊躇っていた。
ゆらりふらりと横に揺れ、伸びきった腕に生気が感じられない。
美佐子のようで、彼女ではない。僕もそんな気がした。
「お゛い! 何やってんだ!」
すると、あろうことか美佐子は、乾燥機の中に身を投じる。
自ら扉を閉め、
——グオォォオォーーーン。
なぜか、稼働した。
——グオオオオォーーーン。
ドタンバタンと音を立てる生身の肉体。
「ミサコ! 出ろ! 出てこいっ!」
僕は取っ手に指をかけ、精一杯引いた。
しかし、開かない。
「手伝おう」
完全に巻き添えを食らっている男と、大のおとな2人がかりでも、
「ぐぐぐぐぐ」
「ぬ゛ぐぐぐっ」
まったくダメ。
「止まって止まってよ!」
彩矢香はボタンを無造作に押してみたが、それも叶わない。
回転するスピードはどんどん増し、美佐子の身体が時折鈍い音を立てて、ピンポン玉みたいに弾かれる。
しかし、中にいる彼女は、僕らをずっと見ていた。
まばたき一つせず。
「ヒィ゛! なな゛なんなんだよー!」
その光景はまさに阿鼻叫喚で、男は逃げだす。
無理もない。僕も腰が砕けていなければ、同じことをしていたかもしれないから。