ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
僕は女を睨みつけ、好機を待っていた。
「ミサコをどうする気だ!」
「そんなのもう知ってるでしょ? しかるべき場所にお供えするのよ」
狂気じみたことを淡々と話すその女には油断も隙もない。
「どないします?」
戻ってきた覆面の男の手に、彩矢香の車のキー。
「……そうね。ハンデをもらおうかしら」
とんだ戯れ言。劣勢なのは、誰がどう見ても僕たちだ。
「追ってくるんでしょ? もしも追いつくことができたら、湯之下美佐子を返してあげるわ」
——ズシャーーーッ。
女は、洗濯機の下めがけて鍵を投げた。
「拾ってらっしゃい。さぁ、行くわよ」
颯爽とワゴン車に向かう3人組。
僕は、女の背中に向かって叫ぶ。
「お前は誰だ!」
「…………」
すると、立ち止まって、
「私は大貫幸恵よ」
と、口角を上げた横顔を見せながら言う。
たしかに、背丈も体格も当時の彼女に似ていた。
だが、
「いや、ちがう! お前は大貫じゃない!!」
まったくもって顔が違う。
「フフッ。さようなら」
女が乗り込むやいなや、煙を立てて走りだすワゴン車。
波乱の空気から静寂が甦り、僕は彩矢香を抱きしめる。
「よかった………」
「……でも、ミサコが……」
「そうだな。どうする?」
答えは1つだった。
僕は洗濯機の前で這いつくばり、思いっきり腕を伸ばす。
「ダ、ダメだ……ッ、届かない」
奥の壁まで届いていた車の鍵を掴むには、悪魔の実の能力が必要だった。
「そうだ!」
彩矢香は何かを思い出し、車の中からバックを取りだす。