再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
「ありがとう」と航くんに言って目線を前に向けると、にこやかに微笑む翼くんが何やら頷きながら口を開いた。


「なんか感慨深いなぁ。本当によかったよ」

「え?」

「大事な幼なじみと大事な弟が恋人同士になってくれてさ」

「……うん」


「大事な」と言ってくれたことに嬉しさを覚える。

それに、航くんに一番近い人に認めてもらえたのだ。

心強い。


「ふたりのことを聞いたのはついさっきなんだけど、コウの初恋が叶ったことが本当に嬉しくてさ。コウってね、紗菜ちゃんが引っ越した後もすごく寂しがってたんだよ。そのコウが紗菜ちゃんを連れてくるって聞いて、待ちきれなくてここにも早く来ちゃったんだよね」

「翼、余計なこと言うなよ」

「余計じゃないって。すごく心配してたんだから。コウが心のどこかで初恋をいつまでも引きずって、チェリーくんのまま一生を終えるんじゃないかってさぁ。紗菜ちゃん、コウのために頑張ってあげて? きっと紗菜ちゃんなら開花させられると思うし、あんな気持ちいいことを知らないで死ぬなんてかわいそうだからさ」

「おい。いい加減にしろよ、翼」

「おー、怖い」


翼くんが航くんの秘密を知っていた上、さらっと暴露したことに驚く。

私は一人っ子だからわからないけれど、兄弟ってそういうところも話すものなのかな……。

でも翼くんも航くんのことを心配していたのだ。

小さい頃もふたりは1言えば10わかり合えるといった雰囲気で、一人っ子の私はいつも羨ましく思っていた。

信頼し合える兄弟というのはいいなと改めて思う。


「えっと……その件に関しては大丈夫だから、安心して?」

「アホ。紗菜も余計なこと言うな」


頭を軽く叩かれて、前のめりになる。


「いたっ。もうっ、航くん、何するの! 酷い!」

「うるさい。その羽根みたいに軽い口をどうにかしろ」

「翼くんも心配してくれてたんだから、安心させなきゃでしょ!」

「そういうのを余計な世話って言うんだよ」


航くんと言い合っていると、翼くんが吹き出すように笑い始めた。


「ふたりの言い合い見るの、懐かしいな。安心した」

「うん、すごく仲良くしてるから安心してね!」

「紗菜、もういいから。そんなことよりも、翼、本題に入れよ。時間あまりないんだろ」

「うん、そうだね」


そう航くんが話を変えようとしたとき、店員が飲み物を運んできた。

グラスを受け取り、刺さっていた太めのストローでくるくると混ぜた後、本題って何かなと思いながら口をつける。

甘酸っぱいりんごの果肉がいい食感を生み出していて、すごくおいしい。
 
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