再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
航くんが車のキーを持って去った後、翼くんにスマホを返しながら問いかける。
「翼くんと航くんってよく会ってるの?」
「最近は家の件があるから結構ね。うちに来てもらうこともあるけど、ここで会うことが多いかな。ほら、このカフェってコウが一番最初に手がけた店だし、雰囲気が好きでさ」
「えっ、ここって航くんが手がけたの?」
「そうだよ。紗菜ちゃん、知らなかった?」
「うん……」
会社のHPに載っている店舗や航くんが海外にいたときの資料は見たことがあるけれど、それよりも前に航くんが携わった案件のことは実はまだあまり知らない。
初めて手がけた案件でこんなに素敵な空間を生み出すことができるなんて、航くんはやっぱりすごい。
「そっかぁ……航くんが作った空間だったんだね。実はね、翼くんに会えることになってちょっとだけ緊張してたの。でもこのカフェに入った瞬間、空間がすごく優しく包み込んでくれて身体の力が抜けたんだよね」
嬉しくて店内を見渡していると、翼くんが私の名前を呼んだ。
「実はさ紗菜ちゃんに聞きたいことがあって、コウに席をはずしてもらったんだ」
「え、聞きたいことって何?」
「うん。紗菜ちゃん、今コウといて幸せ?」
率直な質問に一瞬息をのんだ。
でも、答えはひとつしかない。
「うん。再会してすぐの頃はこうなるなんて全く思わなかったし、航くんにはよく振り回されちゃうけど、今すごく幸せだよ」
「そっか。それなら安心した。コウって簡単に素直になれるタイプじゃないし、ひとりでもやっていけるくらい強いやつだけど、やっぱり一生を一緒に過ごしていく大切な人を見つけてほしかったからさ」
「……うん」
翼くんの兄弟愛が強く伝わってきたのと同時に、私も航くんのことを幸せにしたいと思った。
「そうだ、コウに振り回されてるっていう紗菜ちゃんに、ひとついいこと教えてあげよっか」
「何?」
「コウって興味なさそうに“ふーん”って言った後、無言になることってない?」
「うん、それ航くんあるあるだよ! 想像した話をすると、そんなふうに話を終わらせられるの。ちょっとくらい同感してくれてもいいのに、っていつも思うんだよね」
翼くんなら私の気持ちをわかってくれそうだと、つい愚痴を言ってしまう。
でも翼くんは同意することなく、ただ可笑しそうに笑みをこぼした。