再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
「あれってね、コウの頭の中でいろいろ考えを巡らせてるときなんだよ」

「え? 私の話に呆れてるだけじゃないの?」

「違うよ。紗菜ちゃんの口から出た言葉をどうやったら実現できるか、って考えてるんだよ」


想像もしていなかったことに言葉を失ってしまう。

たしかに「俺の手で紗菜の夢を叶えたい」と航くんは伝えてくれたけれど、他の話にも同じように考えてくれていたんだ……。


「……そっか……そうなんだね。嬉しい……」

「うん。これからもコウのことよろしくな。アマノジャクなやつだけど、紗菜ちゃんのことすごく大切に思ってるからさ」

「……うん、わかってるよ。私も航くんのこと大切に思ってるし、これから先もずっと一緒にいられたらいいなって思ってる」

「よかった」


翼くんは嬉しそうに笑う。

彼のその笑顔で、私はあるできごとを思い出した。


「あっ、そういえばね、航くんと再会した日の朝、翼くんが夢に出てきたんだよ。今思えば、翼くんとこうやって再会する予兆だったのかな」

「へぇ、どんな夢?」

「昔翼くんが“俺が守るから、もうひとりで泣くなよ”って言ってくれた日の夢だよ。あっ、“つらいことなんて吹っ飛ばしてやるから、泣きたいときは俺のところに来て”って言ってくれた夢もその後に見たの。どっちも、昔翼くんが言ってくれたことだよね。あの頃のことを思い出して、すごく幸せな気持ちで目が覚めたんだ」


懐かしく話すけれど、翼くんは思い出そうとする素振りをするだけで、なんの反応もない。

昔の私は翼くん中心で回っていたけれど、彼にとっては幼なじみをなぐさめるためだけの言葉で、きっと覚えていないのだろう。

寂しく思いながらも「10年以上も前のことなんて覚えてないよね」と明るく言うと、ふと翼くんから笑みがこぼれた。


「いや、覚えてるもなにも、それ言ったのは俺じゃなくてコウだと思うよ」

「え?」

「たとえ大切な幼なじみだとしても俺はそんなふうに言わないし、“あのバカ紗菜、またひとりで泣いてた”ってコウはよくこぼしてたから」


ずっと翼くんからの言葉だと思い込んでいた私は、すぐに状況をのみ込めない。

たしかに2回目に翼くんの夢を見たとき、違和感があって私は夢の中の“彼”の名前を呼ぶことができなかった。

それは夢に出てきた言葉を言ったのが、本当は航くんだったから……?

私の初恋が翼くんだということは間違いないけれど、記憶や夢の中では私は航くんに恋をしていたの……?
 
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