鉄仮面女史の微笑みと涙
部長の自宅マンションを出ると、先生はまだ着いてなかった
外で先生を待っていたのだが、昨日夫に声をかけられたことを思い出し、怖くなってマンションのエントランスに戻り深呼吸をした
1人で外にも出られない自分が情けなかった
しばらくすると、先生の車が着いたのが見えたので、エントランスを出た
先生は私に気付くと助手席のドアを中から開けてくれた
車に乗り込むと、先生は心配そうに私の顔を覗き込んだ
「大丈夫か?」
「え?」
「いや……手の怪我の具合は?」
「あ、そういえば、私まだ傷見てないです」
私がそう言うと先生は吹き出した
「先生?」
「念のため病院に行こう」
先生は車を出発させた
私はまだ昨日のお礼をしてなかったことに気付く
「先生、昨日はありがとうございました。先生達が来てくれなかったら、どうなっていたか……」
「いや、間に合ってよかったよ」
「あの、夫は?」
「ん?皆川が言うには股間押さえて転げ回ってたらしいぞ」
「そうなんですか」
私が俯いてため息をつくと先生が私の頭をポンと優しく叩いた
「あんたが落ち込むことはないだろ?ちゃんとした正当防衛だから心配すんな」
「……はい」
「とりあえず明日、あんたの馬鹿旦那に会ってくるから。なるべく早く決着つけるから安心しとけ」
「すんなり離婚してくれるんでしょうか……」
「それは俺の仕事だから。あんたは何も考えなくていいよ」
「よろしくお願いします」
「ああ。着いたぞ」
着いた所はなんとなく記憶にある病院
「昨日の病院ですか?」
「うん。妹夫婦の病院なんだ」
「え?松村先生は柳沢先生の妹さんなんですか?」
「ああ」
びっくりしている私を促して病院に入った
休憩時間だったのにも関わらず松村先生は診察してくれた
「傷は深くないので1週間もあれば塞がると思います。でも加納さん、二度とこんなことしちゃダメですよ」
「はい、すいません。ありがとうございます」
松村先生は手際よく処置をし終えるとにっこり笑って言った
「はい、終わりました。そう言えば加納さん、私が以前住んでた部屋に入るんですよね?」
「え?あの部屋、先生が住んでたんですか?」
「ええ。置いて行った家具と家電、いらなかったら処分して下さいね。それにしても、兄は私が住んでたこと、言ってなかったんですか?」
「はい」
「じゃ、大家が兄だってことも?」
「え?」
「兄がアパートの隣のマンションに住んでることも?」
「隣のマンション?」
初めて聞くことに目を丸くしていると、松村先生はため息をついた
「すいません、うちの兄、言葉足らずで」
「いえ……」
「兄さん、終わったわよ」
松村先生が声をかけると柳沢先生が診察室に入ってきた
2人並んでるのを見てると、どことなく似ていてやっぱり兄妹だなと思った
しかも2人とも美男美女……
私がボーッとしていると、柳沢先生に声をかけられた
「加納さん、行こう」
「あ、はい。松村先生、ありがとうございました」
「いいえ、お大事に。また何かあればいつでも来て下さい」
松村先生に頭を下げると、柳沢先生は私に行こうと言って病院を後にした
車に乗って先生の事務所に向かう途中、さっき松村先生が言ってたことを聞いてみた
「ああ、まあ、ちょうど空いてたし。こっちも入ってもらった方がいいしな」
「隣のマンションに住んでるんですか?」
「あいつ、そんなことも?」
「はい」
「ったく……一応、そのマンションもアパートも俺の所有物なんでな」
「え?」
「って言っても、親からの相続だから俺が建てた訳じゃないけど」
「はあ……」
私がため息をつくと、先生はどうした?と聞いてきた
「先生って、お坊っちゃまなんですね」
そう言うと、先生はあははと笑った
「お坊っちゃまなんて柄じゃないけどな」
「……否定しないんだ」
「はははっ」
先生があまりにもおかしそうに笑うので、私もちょっと吹き出した
こうやって笑うのも、久しぶりのことだった
外で先生を待っていたのだが、昨日夫に声をかけられたことを思い出し、怖くなってマンションのエントランスに戻り深呼吸をした
1人で外にも出られない自分が情けなかった
しばらくすると、先生の車が着いたのが見えたので、エントランスを出た
先生は私に気付くと助手席のドアを中から開けてくれた
車に乗り込むと、先生は心配そうに私の顔を覗き込んだ
「大丈夫か?」
「え?」
「いや……手の怪我の具合は?」
「あ、そういえば、私まだ傷見てないです」
私がそう言うと先生は吹き出した
「先生?」
「念のため病院に行こう」
先生は車を出発させた
私はまだ昨日のお礼をしてなかったことに気付く
「先生、昨日はありがとうございました。先生達が来てくれなかったら、どうなっていたか……」
「いや、間に合ってよかったよ」
「あの、夫は?」
「ん?皆川が言うには股間押さえて転げ回ってたらしいぞ」
「そうなんですか」
私が俯いてため息をつくと先生が私の頭をポンと優しく叩いた
「あんたが落ち込むことはないだろ?ちゃんとした正当防衛だから心配すんな」
「……はい」
「とりあえず明日、あんたの馬鹿旦那に会ってくるから。なるべく早く決着つけるから安心しとけ」
「すんなり離婚してくれるんでしょうか……」
「それは俺の仕事だから。あんたは何も考えなくていいよ」
「よろしくお願いします」
「ああ。着いたぞ」
着いた所はなんとなく記憶にある病院
「昨日の病院ですか?」
「うん。妹夫婦の病院なんだ」
「え?松村先生は柳沢先生の妹さんなんですか?」
「ああ」
びっくりしている私を促して病院に入った
休憩時間だったのにも関わらず松村先生は診察してくれた
「傷は深くないので1週間もあれば塞がると思います。でも加納さん、二度とこんなことしちゃダメですよ」
「はい、すいません。ありがとうございます」
松村先生は手際よく処置をし終えるとにっこり笑って言った
「はい、終わりました。そう言えば加納さん、私が以前住んでた部屋に入るんですよね?」
「え?あの部屋、先生が住んでたんですか?」
「ええ。置いて行った家具と家電、いらなかったら処分して下さいね。それにしても、兄は私が住んでたこと、言ってなかったんですか?」
「はい」
「じゃ、大家が兄だってことも?」
「え?」
「兄がアパートの隣のマンションに住んでることも?」
「隣のマンション?」
初めて聞くことに目を丸くしていると、松村先生はため息をついた
「すいません、うちの兄、言葉足らずで」
「いえ……」
「兄さん、終わったわよ」
松村先生が声をかけると柳沢先生が診察室に入ってきた
2人並んでるのを見てると、どことなく似ていてやっぱり兄妹だなと思った
しかも2人とも美男美女……
私がボーッとしていると、柳沢先生に声をかけられた
「加納さん、行こう」
「あ、はい。松村先生、ありがとうございました」
「いいえ、お大事に。また何かあればいつでも来て下さい」
松村先生に頭を下げると、柳沢先生は私に行こうと言って病院を後にした
車に乗って先生の事務所に向かう途中、さっき松村先生が言ってたことを聞いてみた
「ああ、まあ、ちょうど空いてたし。こっちも入ってもらった方がいいしな」
「隣のマンションに住んでるんですか?」
「あいつ、そんなことも?」
「はい」
「ったく……一応、そのマンションもアパートも俺の所有物なんでな」
「え?」
「って言っても、親からの相続だから俺が建てた訳じゃないけど」
「はあ……」
私がため息をつくと、先生はどうした?と聞いてきた
「先生って、お坊っちゃまなんですね」
そう言うと、先生はあははと笑った
「お坊っちゃまなんて柄じゃないけどな」
「……否定しないんだ」
「はははっ」
先生があまりにもおかしそうに笑うので、私もちょっと吹き出した
こうやって笑うのも、久しぶりのことだった