鉄仮面女史の微笑みと涙
進藤課長は私に気付くと、今度は小さい紙袋を手渡した
「あの、これ?」
「化粧品一式入ってる。なくなったらここに連絡して?そしたら送ってくれるから。もちろんタダで」
そう言って、1枚のカードを差し出した
そしてそれをよく見たら、化粧品ブランド『shindo』の化粧品
品質がいいと最近人気のブランドだけど、品質がいいだけにちょっとお高めな化粧品
これも私には縁がないものだった
「こんな高いもの貰えません!しかも、なくなったらまたタダで送ってくるってなんですか?」
「え?それ、私の母の会社の商品だから」
「は?」
「だから、一生使い放題よ?」
『shindo』が進藤課長のお母さんの会社?
全然知らなかった
私が驚いて何も言えずにいると、祥子ちゃんがキッチンからやってきた
「あ、海青ちゃんも貰ったの?それ、すっごくいいよ〜。私もいつも貰ってるの」
それだけ言うとまたキッチンへと帰って行った
進藤課長を見るとにっこり笑った
「母がね私の友達からはお金貰う訳にはいかないって言って、祥ちゃんにはいつもあげてるの。高橋課長のことも母に言ってるから大丈夫よ」
渡されたカードを見たら、『shindo』の連絡先が書いてあるカードだった
そしてそのカードには『shindo』の社長、進藤南美さんからメッセージがあった
『奈南美と仲良くしてやって下さい。お腹の子供達を守ってくれて、ありがとうございました』
呆然として進藤課長を見ると笑いながら言った
「うちの母、私に甘いの。それとこれ……」
そしてまた1枚の名刺を私に差し出した
「私が行ってる美容室の名刺。私から紹介って言えばちょっとは安くなるから。美容室ってたくさんあってどこに行けばいいか分からないじゃない?ここなら間違いないから、ね?」
私は名刺を受け取ると座り込んだ
そして進藤課長を見上げて聞いた
「何で、私なんかにここまでしてくれるんですか?昨日、私がいろいろ話したからですか?」
進藤課長はちょっと悲しそうに笑って言った
「高橋課長見てると、数年前の私を見ているようでなんか放っておけないの。私も噂を流されたことあるから……」
進藤課長に数年前に流れた噂
『進藤奈南美は取引先に枕営業をして成績をあげている』
そんな噂を流されたら誰だって傷付くだろう
「『鉄仮面女史』なんてあだ名つけられて傷付かない女なんていないわ。私の場合は家に帰って1人で泣けばちょっとはスッキリしたけど、高橋課長は家でも泣けなかったんじゃないの?」
「進藤課長……」
「それに、『私なんか』って言わないで。私はあなただから何かしてあげたいの。だって、友達でしょ?」
「……はい、ありがとうございます。遠慮なくいただきます」
そう言って私達は笑いあった
そう言えば、皆川部長と相川課長はどこに行ったんだろうと思ったら、祥希子ちゃんを連れて買い物に行っているらしい
大方準備が出来て、女3人で喋っていると祥子ちゃんが言った
「2人とも友達になったっていう割に、『進藤課長』『高橋課長』って呼びあっててなんか他人行儀だよ。呼び方変えたら?」
「それもそうよねぇ」
「でも進藤課長は会社の先輩だし」
進藤課長と2人でう〜んと言っていたら、皆川部長と祥希子ちゃん、相川課長が、下で偶然会ったという柳沢先生と一緒に帰ってきた
そんな時、進藤課長がそうだと言った
「私はみーちゃんって呼ぼうかしら?」
「それいいねぇ」
「昔飼ってた猫がみーちゃんでした」
「そんなこといいから、みーちゃんはどうする?」
「じゃ、普通に奈南美さんでいいですか?」
「懐かしい。健二と付き合いだした頃、そう呼ばれてたわ」
「そうなんですか?」
「うん。なんか懐かしくていいわねぇ」
「じゃ、けって〜い」
女同士で盛り上がっているのを、帰ってきたばかりの男性陣は目を丸くして見ていたのに気付かなかった
「あの、これ?」
「化粧品一式入ってる。なくなったらここに連絡して?そしたら送ってくれるから。もちろんタダで」
そう言って、1枚のカードを差し出した
そしてそれをよく見たら、化粧品ブランド『shindo』の化粧品
品質がいいと最近人気のブランドだけど、品質がいいだけにちょっとお高めな化粧品
これも私には縁がないものだった
「こんな高いもの貰えません!しかも、なくなったらまたタダで送ってくるってなんですか?」
「え?それ、私の母の会社の商品だから」
「は?」
「だから、一生使い放題よ?」
『shindo』が進藤課長のお母さんの会社?
全然知らなかった
私が驚いて何も言えずにいると、祥子ちゃんがキッチンからやってきた
「あ、海青ちゃんも貰ったの?それ、すっごくいいよ〜。私もいつも貰ってるの」
それだけ言うとまたキッチンへと帰って行った
進藤課長を見るとにっこり笑った
「母がね私の友達からはお金貰う訳にはいかないって言って、祥ちゃんにはいつもあげてるの。高橋課長のことも母に言ってるから大丈夫よ」
渡されたカードを見たら、『shindo』の連絡先が書いてあるカードだった
そしてそのカードには『shindo』の社長、進藤南美さんからメッセージがあった
『奈南美と仲良くしてやって下さい。お腹の子供達を守ってくれて、ありがとうございました』
呆然として進藤課長を見ると笑いながら言った
「うちの母、私に甘いの。それとこれ……」
そしてまた1枚の名刺を私に差し出した
「私が行ってる美容室の名刺。私から紹介って言えばちょっとは安くなるから。美容室ってたくさんあってどこに行けばいいか分からないじゃない?ここなら間違いないから、ね?」
私は名刺を受け取ると座り込んだ
そして進藤課長を見上げて聞いた
「何で、私なんかにここまでしてくれるんですか?昨日、私がいろいろ話したからですか?」
進藤課長はちょっと悲しそうに笑って言った
「高橋課長見てると、数年前の私を見ているようでなんか放っておけないの。私も噂を流されたことあるから……」
進藤課長に数年前に流れた噂
『進藤奈南美は取引先に枕営業をして成績をあげている』
そんな噂を流されたら誰だって傷付くだろう
「『鉄仮面女史』なんてあだ名つけられて傷付かない女なんていないわ。私の場合は家に帰って1人で泣けばちょっとはスッキリしたけど、高橋課長は家でも泣けなかったんじゃないの?」
「進藤課長……」
「それに、『私なんか』って言わないで。私はあなただから何かしてあげたいの。だって、友達でしょ?」
「……はい、ありがとうございます。遠慮なくいただきます」
そう言って私達は笑いあった
そう言えば、皆川部長と相川課長はどこに行ったんだろうと思ったら、祥希子ちゃんを連れて買い物に行っているらしい
大方準備が出来て、女3人で喋っていると祥子ちゃんが言った
「2人とも友達になったっていう割に、『進藤課長』『高橋課長』って呼びあっててなんか他人行儀だよ。呼び方変えたら?」
「それもそうよねぇ」
「でも進藤課長は会社の先輩だし」
進藤課長と2人でう〜んと言っていたら、皆川部長と祥希子ちゃん、相川課長が、下で偶然会ったという柳沢先生と一緒に帰ってきた
そんな時、進藤課長がそうだと言った
「私はみーちゃんって呼ぼうかしら?」
「それいいねぇ」
「昔飼ってた猫がみーちゃんでした」
「そんなこといいから、みーちゃんはどうする?」
「じゃ、普通に奈南美さんでいいですか?」
「懐かしい。健二と付き合いだした頃、そう呼ばれてたわ」
「そうなんですか?」
「うん。なんか懐かしくていいわねぇ」
「じゃ、けって〜い」
女同士で盛り上がっているのを、帰ってきたばかりの男性陣は目を丸くして見ていたのに気付かなかった