鉄仮面女史の微笑みと涙
みんなが揃ってパーティーが始まった
祥子ちゃんの手料理は美味しくて、柳沢先生もびっくりしていた
みんなで喋って笑ってお腹が膨れたところで、私は来週末には皆川部長宅からアパートへと移りますと言った
「すぐに生活できそうなのか?高橋」
「いえ、まだ細々としたものは揃えてなくて。来週までには何とかしようと思ってます」
「でも、まだ1人で外出するのは怖いんじゃないか?」
「そうなんですけど……」
部長に痛いところを突っ込まれて困っていると、先生が口を開いた
「じゃ今からでも俺が車出そうか?」
え?と思って先生を見ると、きょとんとしていた
「先生、いいんですか?」
「いいよ。平日の仕事終わりに揃えるのも大変だろ?だったら今日まとめて揃えた方がいいんじゃないか?」
「それはそうですが……」
私がどうしようかと迷っていると、祥子ちゃんがにっこり笑って言った
「海青ちゃん、行っておいでよ。私達、まだ楽しんでるから。奈南ちゃん達も夜までいてもらうし。ね?奈南ちゃん」
「ええ。まだ喋り足りないしね」
祥子ちゃんと奈南美さんが笑い合っていると、部長と相川課長も苦笑していた
「柳沢さんも、一緒に戻ってきて下さいね」
「そうさせてもらいます。高橋さん、行こうか」
「あ、はい」
「行ってらっしゃ〜い」
先生がスタスタと行ってしまうので私は急いでバッグを持って着いて行った
皆川部長が玄関まで来て、ごゆっくり~と見送ってくれた
そして駐車場まで降りて行くと、今まで見たことない車に先生が近づいて行った
「先生、車変えたんですか?」
「いや、これは趣味の車。あんたが乗ったことあるのは仕事用の車」
私は車のことはよく分からないが、大きな四駆の車でちょっと古くてカスタマイズしているのは分かる
車高が高くてどうやって乗るんだろうという感じだ
と言うか、二台も車を持ってるなんて……
マンションといい、この車といい、この人が持ってないものなんてないんじゃないだろうか?
先生は助手席のドアを開けると、私に手を差し伸べた
「車高高くて乗りにくいから」
私は先生に言われるまま、先生の手に自分の手を重ねた
そして先生は手際よく私を車に乗せ、助手席のドアを閉めて運転席に乗り込み、エンジンをかけた
「どうする?一回アパート行って、何を買うか見繕うか?」
「そうですね」
「了解」
先生が車を出発させる
こんな車高が高い車に乗ったことがなかったから圧倒されていると、先生が吹き出した
「大丈夫か?」
「ただ慣れてないだけです」
「慣れないと車に酔う人もいるらしいから、気分悪くなったら言って」
「乗り物酔いはしたことないので大丈夫です」
「へえ。そりゃ凄いな」
そんなに時間が掛からずにアパートに着いた
結構近いんだと思っていると、車は駐車場に止められ、先生は車を降りた
私も降りようとドアを開けると、どう見ても足が届く高さじゃない
ちょっとぐらい飛び降りればいいかと思って飛び降りたら、先生が受け止めてくれた
「危ないことするなよ」
「これくらい大丈夫かと……すいません」
先生はため息をつきながら私を地面に降ろしてくれた
先生を見上げたら呆れた顔をしていたけど、私の頭をポンと優しく叩いて、行くぞとアパートへ入って行った
そして今まで何回か来たことのある部屋へと入る
ここが、来週から私の家になる
そう思うと嬉しくなった
「どうした?」
「これから誰にも遠慮しないで暮らせるんだなと思ったら、何だか嬉しくて」
「そうか。良かったな」
「はい。ありがとうございます。先生のおかげです」
それから、買い足すものをメモしながら部屋の中をウロウロしている間、先生は窓の外を見ていた
「先生?」
「ん?終わったか?」
「はい。何を見てたんですか?」
「ここから俺の家、見えるんだなと思って」
先生が指差す方を見ると、このアパートの隣にあるマンションの最上階だった
「うわ、高い……」
「ここよりはな」
「ここも景色がいいけど、先生の家からの方がいいでしょうね」
「それは妹からも散々言われた」
「それに」
「ん?」
「いつも先生に見下ろされてる感じがします」
私がそう言うと、先生は声を出して笑った
私もつられて笑った
それを見て先生は優しい笑顔になった
「やっと笑えるようになったな」
「え?」
先生はまた私の頭をポンと叩いた
「じゃ、行くか。メモした以外に買うものあるか?」
「あ、えっと。スマホを買い替えたくて……」
「スマホ?」
「今使ってるのは、夫から……別れた夫から渡されたものなので。ついでに番号とメールアドレスも変えようかと」
私が俯くと、先生は優しく頭を撫でながら言った
「じゃ、最初にスマホを見に行って、買い物に行こう。買い物が終わるころには新しいスマホも受け取れるだろ」
「はい。その前に銀行のATMに行って欲しいんですけど」
「分かった。じゃ、行こう」
「お願いします」
祥子ちゃんの手料理は美味しくて、柳沢先生もびっくりしていた
みんなで喋って笑ってお腹が膨れたところで、私は来週末には皆川部長宅からアパートへと移りますと言った
「すぐに生活できそうなのか?高橋」
「いえ、まだ細々としたものは揃えてなくて。来週までには何とかしようと思ってます」
「でも、まだ1人で外出するのは怖いんじゃないか?」
「そうなんですけど……」
部長に痛いところを突っ込まれて困っていると、先生が口を開いた
「じゃ今からでも俺が車出そうか?」
え?と思って先生を見ると、きょとんとしていた
「先生、いいんですか?」
「いいよ。平日の仕事終わりに揃えるのも大変だろ?だったら今日まとめて揃えた方がいいんじゃないか?」
「それはそうですが……」
私がどうしようかと迷っていると、祥子ちゃんがにっこり笑って言った
「海青ちゃん、行っておいでよ。私達、まだ楽しんでるから。奈南ちゃん達も夜までいてもらうし。ね?奈南ちゃん」
「ええ。まだ喋り足りないしね」
祥子ちゃんと奈南美さんが笑い合っていると、部長と相川課長も苦笑していた
「柳沢さんも、一緒に戻ってきて下さいね」
「そうさせてもらいます。高橋さん、行こうか」
「あ、はい」
「行ってらっしゃ〜い」
先生がスタスタと行ってしまうので私は急いでバッグを持って着いて行った
皆川部長が玄関まで来て、ごゆっくり~と見送ってくれた
そして駐車場まで降りて行くと、今まで見たことない車に先生が近づいて行った
「先生、車変えたんですか?」
「いや、これは趣味の車。あんたが乗ったことあるのは仕事用の車」
私は車のことはよく分からないが、大きな四駆の車でちょっと古くてカスタマイズしているのは分かる
車高が高くてどうやって乗るんだろうという感じだ
と言うか、二台も車を持ってるなんて……
マンションといい、この車といい、この人が持ってないものなんてないんじゃないだろうか?
先生は助手席のドアを開けると、私に手を差し伸べた
「車高高くて乗りにくいから」
私は先生に言われるまま、先生の手に自分の手を重ねた
そして先生は手際よく私を車に乗せ、助手席のドアを閉めて運転席に乗り込み、エンジンをかけた
「どうする?一回アパート行って、何を買うか見繕うか?」
「そうですね」
「了解」
先生が車を出発させる
こんな車高が高い車に乗ったことがなかったから圧倒されていると、先生が吹き出した
「大丈夫か?」
「ただ慣れてないだけです」
「慣れないと車に酔う人もいるらしいから、気分悪くなったら言って」
「乗り物酔いはしたことないので大丈夫です」
「へえ。そりゃ凄いな」
そんなに時間が掛からずにアパートに着いた
結構近いんだと思っていると、車は駐車場に止められ、先生は車を降りた
私も降りようとドアを開けると、どう見ても足が届く高さじゃない
ちょっとぐらい飛び降りればいいかと思って飛び降りたら、先生が受け止めてくれた
「危ないことするなよ」
「これくらい大丈夫かと……すいません」
先生はため息をつきながら私を地面に降ろしてくれた
先生を見上げたら呆れた顔をしていたけど、私の頭をポンと優しく叩いて、行くぞとアパートへ入って行った
そして今まで何回か来たことのある部屋へと入る
ここが、来週から私の家になる
そう思うと嬉しくなった
「どうした?」
「これから誰にも遠慮しないで暮らせるんだなと思ったら、何だか嬉しくて」
「そうか。良かったな」
「はい。ありがとうございます。先生のおかげです」
それから、買い足すものをメモしながら部屋の中をウロウロしている間、先生は窓の外を見ていた
「先生?」
「ん?終わったか?」
「はい。何を見てたんですか?」
「ここから俺の家、見えるんだなと思って」
先生が指差す方を見ると、このアパートの隣にあるマンションの最上階だった
「うわ、高い……」
「ここよりはな」
「ここも景色がいいけど、先生の家からの方がいいでしょうね」
「それは妹からも散々言われた」
「それに」
「ん?」
「いつも先生に見下ろされてる感じがします」
私がそう言うと、先生は声を出して笑った
私もつられて笑った
それを見て先生は優しい笑顔になった
「やっと笑えるようになったな」
「え?」
先生はまた私の頭をポンと叩いた
「じゃ、行くか。メモした以外に買うものあるか?」
「あ、えっと。スマホを買い替えたくて……」
「スマホ?」
「今使ってるのは、夫から……別れた夫から渡されたものなので。ついでに番号とメールアドレスも変えようかと」
私が俯くと、先生は優しく頭を撫でながら言った
「じゃ、最初にスマホを見に行って、買い物に行こう。買い物が終わるころには新しいスマホも受け取れるだろ」
「はい。その前に銀行のATMに行って欲しいんですけど」
「分かった。じゃ、行こう」
「お願いします」