鉄仮面女史の微笑みと涙
引っ越した次の日の日曜日、あらかた片付けは済んでいたので、ゆっくり過ごしていた
部長の家でもゆっくりと過ごさせてもらっていたが、結婚していた時は一人きりのこんな時間を過ごすなんてことがなかったので嬉しかった
まあでも一日中家にいるのもなぁと思って、天気もいいし近所を散歩してみることにした
外に出て何気なく歩いていると公園があったのでちょっと入ってみた
結構大きな公園で、池もあるし、芝生もあるし、子供が遊ぶ遊具もあって、家族連れの姿をよく見かけた
芝生の方を歩いていると、ベンチがあったので座った
「気持ちいいなぁ」
池を見ながら深呼吸してぼーっとしていると、なんだか眠くなり欠伸が出た
「こんなとこで寝るなよ」
「えっ?あ、先生?」
可笑しそうに笑う先生は隣に座った
私は恥ずかしくて俯いていた
「こんなにいい天気だし眠たくもなるよな」
「先生……」
「片付けは終わったのか?」
「はい。大体昨日のうちに終わってたので、天気もいいし散歩でもと思って」
「俺も。この公園、近いんだけど独り身だとなかなか来る機会ないけど久しぶりに来てみたら、あんたが欠伸してた」
「もう、やめて下さいよ」
先生は、ハハっと笑って背伸びした
そして芝生で遊んでいる家族連れの方を見ていた
「ああいうの見ると、独身なのが寂しくなってくるな。あんたはまだそうは思えないか」
「そうですね。やっと1人になれましたから」
「俺も1回失敗してるし、そんなこと全然思わなかったけど、皆川見てたら案外家族っていいのかもなって思えてきた」
「あの『鬼の皆川』が家に帰ったら、愛妻家の親バカになっちゃうんですからね」
「ハハっ。あいつ会社で『鬼の皆川』って呼ばれてんのか?」
「あ、部長には私が言ったって言わないで下さいね」
「分かってるよ」
そうしてまた家族連れを見る
若い頃は、結婚したらあったかい家庭が作れるものだと思っていた
でも現実は全く違うものだった
「先生は再婚とか考えるんですか?」
「最近ちょっと考えるようになったかな。このまま1人で年とって孤独死ってのも嫌だからな」
「それはありますね。でも先生ならすぐに相手が見つかりそうですけど。ハンサムだし、弁護士だし、お坊っちゃまだし」
「そりゃどうも」
「否定しないんですね」
「まあ、それ目当てで寄ってきた女が何人かいたからな」
「うわぁ……」
「気の毒そうな目で見るなよ」
「すいません」
そして2人で笑い合う
「さてと、一緒に散歩しないか?やっぱりここを1人で歩くのは浮きまくってて落ち着かねえ」
「ふふっ。いいですよ」
先生は立ち上がると、私に手を差し伸べた
びっくりしたが、その手に自分の手を重ねる
私が立ち上がると、先生は手を離して歩き出した
離されたその手がなんだか寂しく感じて、私は急いで先生に追いかけた
隣に並ぶと先生が優しく笑った
つられて私も笑う
先生と一緒の散歩は、なんだか楽しかった
そして月曜日、私はいつもより早く出勤して仕事をしていると、皆川部長が出勤してきた
「高橋課長が出て行った後、祥希子が大泣きして参ったよ」
「え?あんなにご機嫌だったじゃないですか」
「またすぐに帰って来ると思ってたみたいでね、帰って来ないと分かったとたんに大泣き。近いうちに遊びに来てくれるか?祥子も寂しがってる」
「はい。またお邪魔します」
そんな会話をしていると、みんな出勤してきたので簡単な週明けの朝礼を済ませ、新しい1週間が始まった
部長の家でもゆっくりと過ごさせてもらっていたが、結婚していた時は一人きりのこんな時間を過ごすなんてことがなかったので嬉しかった
まあでも一日中家にいるのもなぁと思って、天気もいいし近所を散歩してみることにした
外に出て何気なく歩いていると公園があったのでちょっと入ってみた
結構大きな公園で、池もあるし、芝生もあるし、子供が遊ぶ遊具もあって、家族連れの姿をよく見かけた
芝生の方を歩いていると、ベンチがあったので座った
「気持ちいいなぁ」
池を見ながら深呼吸してぼーっとしていると、なんだか眠くなり欠伸が出た
「こんなとこで寝るなよ」
「えっ?あ、先生?」
可笑しそうに笑う先生は隣に座った
私は恥ずかしくて俯いていた
「こんなにいい天気だし眠たくもなるよな」
「先生……」
「片付けは終わったのか?」
「はい。大体昨日のうちに終わってたので、天気もいいし散歩でもと思って」
「俺も。この公園、近いんだけど独り身だとなかなか来る機会ないけど久しぶりに来てみたら、あんたが欠伸してた」
「もう、やめて下さいよ」
先生は、ハハっと笑って背伸びした
そして芝生で遊んでいる家族連れの方を見ていた
「ああいうの見ると、独身なのが寂しくなってくるな。あんたはまだそうは思えないか」
「そうですね。やっと1人になれましたから」
「俺も1回失敗してるし、そんなこと全然思わなかったけど、皆川見てたら案外家族っていいのかもなって思えてきた」
「あの『鬼の皆川』が家に帰ったら、愛妻家の親バカになっちゃうんですからね」
「ハハっ。あいつ会社で『鬼の皆川』って呼ばれてんのか?」
「あ、部長には私が言ったって言わないで下さいね」
「分かってるよ」
そうしてまた家族連れを見る
若い頃は、結婚したらあったかい家庭が作れるものだと思っていた
でも現実は全く違うものだった
「先生は再婚とか考えるんですか?」
「最近ちょっと考えるようになったかな。このまま1人で年とって孤独死ってのも嫌だからな」
「それはありますね。でも先生ならすぐに相手が見つかりそうですけど。ハンサムだし、弁護士だし、お坊っちゃまだし」
「そりゃどうも」
「否定しないんですね」
「まあ、それ目当てで寄ってきた女が何人かいたからな」
「うわぁ……」
「気の毒そうな目で見るなよ」
「すいません」
そして2人で笑い合う
「さてと、一緒に散歩しないか?やっぱりここを1人で歩くのは浮きまくってて落ち着かねえ」
「ふふっ。いいですよ」
先生は立ち上がると、私に手を差し伸べた
びっくりしたが、その手に自分の手を重ねる
私が立ち上がると、先生は手を離して歩き出した
離されたその手がなんだか寂しく感じて、私は急いで先生に追いかけた
隣に並ぶと先生が優しく笑った
つられて私も笑う
先生と一緒の散歩は、なんだか楽しかった
そして月曜日、私はいつもより早く出勤して仕事をしていると、皆川部長が出勤してきた
「高橋課長が出て行った後、祥希子が大泣きして参ったよ」
「え?あんなにご機嫌だったじゃないですか」
「またすぐに帰って来ると思ってたみたいでね、帰って来ないと分かったとたんに大泣き。近いうちに遊びに来てくれるか?祥子も寂しがってる」
「はい。またお邪魔します」
そんな会話をしていると、みんな出勤してきたので簡単な週明けの朝礼を済ませ、新しい1週間が始まった