鉄仮面女史の微笑みと涙
「神崎、プライベートな事なんだからそんなに追求するなよ」
「あ、はい。そうですね。ゴメンね、高橋課長」
「いえ。あ、さっきはありがとうございました」


部長がこの場をおさめてくれて、私の事はこれ以上聞かれなかった
みんなも何もなかったように楽しくまた飲みはじめた
だが、私はその輪の中に入っていけなかった
さっきから神崎課長の言葉が頭から離れない


『本当に付き合ってないの?』


私と先生の関係って何だろう?
お互いに付き合おうとかも言ってない
ただ、一緒にいたいから一緒にいて、手を繋ぐのも、不意に抱きしめられるのも、頰や額にキスされるのも嫌じゃないから受け入れる
それは何故?と考えると、答えは1つしかなかった


私は、先生の事が好きなんだ


自分の馬鹿さ加減に呆れてしまう
いい歳して、こんな事に気付かないなんて


そして私はグラスに残っていた焼酎を一気に飲み干した
みんなびっくりしていたが、皆川部長だけは口の端を上げて笑っていた


「部長」
「何だ?」
「お先に失礼していいですか?」


無性に先生に会いたくてしょうがなかった
ただ先生に会いたかった


「もうちょっと待ってろ。迎えが来るから」
「え?」


部長はニヤっと笑って続けた


「さっき柳沢にメッセージ送ったんだ。『お前の彼女が見ず知らずの男に告白された。心配だったら迎えに来い』って」
「え?」
「あいつ、速攻で『すぐ行く。店教えろ』って返信してきた。否定もせずに。多分もうすぐ着くよ。あ、来た来た」


え?と驚いて振り向くと、そこには本当に先生の姿があった
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