鉄仮面女史の微笑みと涙
唇が離れると、先生はギュッと私を抱きしめた
それから深いため息をつく
「俺としては、もっと時間かけたかったんだけどな」
「え?」
その言葉に驚いて体を離す
もっと時間をかけたかったって、どういうこと?
私が考えあぐねていると、先生は私の手を握った
「海青はあのバカ旦那のせいで傷ついてた。だからその傷が癒えるまで待とうと思ってた。傷ついて弱ってる海青につけこむような事はしたくなかった」
そんな事まで考えてくれていたなんて知らなかった
「でも皆川にはバレてたけどな。事あるごとに『高橋とはどうなった?』って面白がって聞いてきた」
「え?部長が?」
「ああ。こうも言ってた。『お前の気持ちはダダ漏れなのに、気付かない高橋も大したもんだ』ってな」
「ひどい……」
ハハッと先生が笑う
つられて私も笑うと、先生は私の頰に手を当てた
「海青。これから先、何があっても守るから、俺の隣にいてくれないか?」
「先生……なんか、プロポーズみたいですよ?」
「まあ、いずれはな。その時はまた言うさ」
「先生?」
「ん?」
「私のこと、好き?」
少し照れたように笑って言った
「ああ。好きだよ。いつの間にか好きになってた」
その言葉に涙が溢れた
先生がその涙を拭ってくれる
「私も、先生が好きです。いつの間にか好きになってました」
「じゃ、似た者同士だな。俺たち」
「そうですね」
そう言って笑い合う
「そろそろ風呂入るか。俺ちょっと風呂入れてくる」
「はい」
先生がお風呂場に行くと、私はテーブルの上のものを片付けて、キッチンで洗い物をしていたら、先生が隣に来て洗ったものを拭いていく
「食洗機使えばいいのに」
「ちょっとだけなので」
「なあ、海青」
「はい?」
「いつまで俺の事、『先生』って呼ぶつもり?」
思わず洗っていたグラスを落としそうになった
そんなこと考えたことがなかった
だって先生は出会った時から、弁護士の先生だったから
「俺の名前知らないってことないよな?」
「ないですよ?」
「じゃ、呼んでみてよ」
「……柳沢さん?」
「そっちかよ」
「……ご、さん?」
「聞こえないし」
「透吾さん?」
「『さん』はいらない。なんかそんな柄じゃないし。『くん』も無しな」
「え……」
年上の人にいきなり呼び捨ては……と思って、何も言えないでいると、先生はわざとらしくため息をついた
「呼んでくれないわけ?」
「え、いや、だって」
「じゃ、言えよ」
「なんか、脅迫されてる気分です」
「いいから、早く」
意地悪な顔をしている先生が待っている
私は意を決して言った
「……透吾」
「もう一回」
「透吾」
「……よく出来ました」
そう言って先生は軽く私の頰にキスをして、私が洗っていたグラスを取り上げた
きっと私の顔は真っ赤になってるのに違いない
「そろそろ風呂いいと思うから、先に入ってこいよ」
「え?私、後でいいですよ」
「いいから。今すぐ行かないと、一緒に入るぞ」
その言葉に一瞬で顔が熱くなり、急いでキッチンを離れた
先生……透吾の笑い声が聞こえる
でも、何だかそれが幸せで、私も小さく笑った
それから深いため息をつく
「俺としては、もっと時間かけたかったんだけどな」
「え?」
その言葉に驚いて体を離す
もっと時間をかけたかったって、どういうこと?
私が考えあぐねていると、先生は私の手を握った
「海青はあのバカ旦那のせいで傷ついてた。だからその傷が癒えるまで待とうと思ってた。傷ついて弱ってる海青につけこむような事はしたくなかった」
そんな事まで考えてくれていたなんて知らなかった
「でも皆川にはバレてたけどな。事あるごとに『高橋とはどうなった?』って面白がって聞いてきた」
「え?部長が?」
「ああ。こうも言ってた。『お前の気持ちはダダ漏れなのに、気付かない高橋も大したもんだ』ってな」
「ひどい……」
ハハッと先生が笑う
つられて私も笑うと、先生は私の頰に手を当てた
「海青。これから先、何があっても守るから、俺の隣にいてくれないか?」
「先生……なんか、プロポーズみたいですよ?」
「まあ、いずれはな。その時はまた言うさ」
「先生?」
「ん?」
「私のこと、好き?」
少し照れたように笑って言った
「ああ。好きだよ。いつの間にか好きになってた」
その言葉に涙が溢れた
先生がその涙を拭ってくれる
「私も、先生が好きです。いつの間にか好きになってました」
「じゃ、似た者同士だな。俺たち」
「そうですね」
そう言って笑い合う
「そろそろ風呂入るか。俺ちょっと風呂入れてくる」
「はい」
先生がお風呂場に行くと、私はテーブルの上のものを片付けて、キッチンで洗い物をしていたら、先生が隣に来て洗ったものを拭いていく
「食洗機使えばいいのに」
「ちょっとだけなので」
「なあ、海青」
「はい?」
「いつまで俺の事、『先生』って呼ぶつもり?」
思わず洗っていたグラスを落としそうになった
そんなこと考えたことがなかった
だって先生は出会った時から、弁護士の先生だったから
「俺の名前知らないってことないよな?」
「ないですよ?」
「じゃ、呼んでみてよ」
「……柳沢さん?」
「そっちかよ」
「……ご、さん?」
「聞こえないし」
「透吾さん?」
「『さん』はいらない。なんかそんな柄じゃないし。『くん』も無しな」
「え……」
年上の人にいきなり呼び捨ては……と思って、何も言えないでいると、先生はわざとらしくため息をついた
「呼んでくれないわけ?」
「え、いや、だって」
「じゃ、言えよ」
「なんか、脅迫されてる気分です」
「いいから、早く」
意地悪な顔をしている先生が待っている
私は意を決して言った
「……透吾」
「もう一回」
「透吾」
「……よく出来ました」
そう言って先生は軽く私の頰にキスをして、私が洗っていたグラスを取り上げた
きっと私の顔は真っ赤になってるのに違いない
「そろそろ風呂いいと思うから、先に入ってこいよ」
「え?私、後でいいですよ」
「いいから。今すぐ行かないと、一緒に入るぞ」
その言葉に一瞬で顔が熱くなり、急いでキッチンを離れた
先生……透吾の笑い声が聞こえる
でも、何だかそれが幸せで、私も小さく笑った