鉄仮面女史の微笑みと涙
寝室に入ると、抱きしめられてキスされた
最初はついばむような気するだったのが、だんだんと深くなっていき、私は透吾にしがみついた
そしてベッドに押し倒されて、唇が離れていく
私を見下ろす透吾は、優しく私の頭を撫でた


「綺麗だな」


そう呟くと私の首筋にキスを落とす
それからは、透吾に与えられる快感に身を委ねて翻弄されるだけだった
どこもかしこも優しく触られ、身体中に赤い痕が付けられる
恥ずかしさはあるけれど、嫌ではなかった
生まれて初めて高みに登らされた時は、透吾に縋って優しく抱きしめてくれた
透吾が私の中に全部収まった時は、涙がこぼれた
それさえも愛おしく拭ってくれて、身体を揺らされ、同時に果てた
余韻から覚めると、透吾は私の隣に横になりそのまま抱きしめられた


「体、大丈夫か?」
「うん。大丈夫」
「年甲斐もなく無茶させたかもしれないなって思って」
「え?」
「あまりにも初々しい反応してくれるもんだから、理性が吹っ飛んだ」


恥ずかしくて顔を埋めると、抱きしめらるている腕に力がこもる


「透吾」
「ん?」
「私、誰かに抱かれるのがこんなに幸せなんて知らなかった」
「……海青」
「でもお願いがあるの」
「何だ?」
「後ろからされるのは嫌」
「え?」
「あと、痣が残るぐらい押さえつけられるのも嫌」


それだけ言うと、透吾は私を組み敷いて見下ろした
その顔はとても苦しそうだった


「でも、それ以外は何されてもいいから、だから、嫌いにならないで」
「……嫌いになる訳ないだろ。バカヤロウ」


そうして透吾は、私の体を力強く抱きしめて、明け方近くまで私を離さなかった
体は疲れて限界だったけど、心は満たされた夜だった
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