鉄仮面女史の微笑みと涙
転勤
透吾と気持ちが通じあった2日後の日曜日、祥子ちゃんと奈南美さんに半ば強引に呼び出されてランチ会をした
そこで洗いざらい全てを白状させられて大変だったけど、最後は


「今度こそ幸せにならないとね」


と言ってくれた
その後、透吾が買い物するというので待ち合わせて行った場所はジュエリーショップ
何で?と思いながらもお店に入ると、透吾は指輪を選び出した
しかも、私の左の薬指に嵌めてお店の人と、ああでもないこうでもないと話している


「透吾?何?どうしたの?私、指輪なんて……」
「見ず知らずの男に告白されない為の虫除け。あ、これピッタリ。これください」


そう言ったのは、ハーフエタニティのリング
デザインもスッキリしていて普段使いでもおかしくないようなもの
値段は、私の感覚からはその場でポンと買えるような値段じゃなかった


「ちょっ、透吾!こんな高価なもの簡単に買わないで」
「海青はだまってろ。刻印も何もいりません。今日これ着けて帰りますから」


私を無視してカードをお店の人に渡し、お店の人は笑顔で分かりましたと会計に行ってしまった
私はあまりの出来事に唖然として、何も言えなかった
それを見た透吾は私の右手を握って言った


「俺の自己満足だから気にすんな。今日からこれ外すなよ」
「気にすんなって……」
「次の指輪買うまでは絶対外すな」
「え?」


透吾を見るとちょっと顔が赤い


「次は海青がいいと思うやつ選べばいい。今日のは俺が海青にすぐ着けて欲しかったからそれを買ったけどな。気に入らなくても絶対外すな」


そう言われて左手の薬指を見る
それはキラキラと輝いていて、とても素敵な指輪だった


「……気に入らないわけないじゃない。すっごく嬉しい。ありがとう透吾」


それを聞くと、透吾は安心したように笑った


それからその指輪を外したことはない
会社のみんなには散々冷やかされたけど、それも嬉しく思えた
< 55 / 92 >

この作品をシェア

pagetop