鉄仮面女史の微笑みと涙
『高橋課長、秘書室の矢野です。すぐに社長室に来てもらえますか?』
「はい、分かりました」


電話を切り、部長の席を見ると部長の姿はなかった
そう言えば役員室に行くと言っていたので、もしかしたら社長室にいるのかもしれない


「宮本くん。ちょっと社長室に行って来ます」
「分かりました」


秘書室に向かうと矢野くんが社長室に取り次いでくれて、社長室に向かう
奈南美さんは1ヶ月前に退職した
私と透吾が付き合い始めたのと同じ頃だった
社長室の扉をノックして中に入ると、やっぱり皆川部長もいた
しかも、難しい顔をして


「高橋課長。呼び出して悪かったね。まあ、そこに座ってくれ」
「はい」


社長に促されて、皆川部長の隣に座る
部長はまだ難しい顔をしている


「部長?どうしたんですか?」
「……いや」
「皆川が不機嫌な理由は私から話すよ」


そう言うと社長は私たちの向かいの席に座り、私に資料を手渡した


「あの、これは?」
「我が社の将来を担う、女性幹部候補のリストだよ」
「え?」


そんな資料を何故私に?と思いながらそれに目を通した
そして、絶句した
その筆頭候補が私だったからだ
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