鉄仮面女史の微笑みと涙
正式に辞令が出る間も海外事業部で働くようになって驚いたのは、海外事業部のメンバーのチームワークの良さと、やっぱり各々のレベルが高いことだった

海外事業部のメンバーというのは
第1課、相川健次課長(35)と麻生隆寛(32)
相川課長は半年前に秘書室の進藤奈南美課長(36)と結婚した
進藤課長は会社では旧姓で通しているので、私達は進藤課長と呼んでいる
進藤課長は今、妊娠中で出産前には退職されると聞いた
はっきり言って、美男美女カップルだ
麻生くんは、少し背が低いことを気にしていると、相川課長が小声で教えてくれた
第2課、神崎 悟課長(37)と木下真理子(28)
神崎課長も今から1年前ぐらいに結婚して、娘さんを溺愛するパパさんらしい
木下さんは、海外事業部に私と自分しか女性がいないからか、何かと気にかけてくれている
私にとってもありがたい存在だ
第3課、永井沙耶課長(34)と宮本忠直(30)
永井課長とは、アメリカに転勤になる前に1回だけ会うことができた
私を後任に選んでくれたことにお礼を言うと、優しく笑って、頑張ってねと言ってくれた
これでまた婚期が遅れるけどね〜ともぼやいていたが

宮本くんは、海外事業部に配属される前はマーケティング部に所属していて、その時も、まだマーケティング部にいた進藤課長の部下だったらしく


「俺多分、女性の部下になる星の下に産まれてきたんだと思います!」


と元気に言っていた
そんな宮本くんは元柔道の国体選手で、立派な体格をしている
そして、海外事業部のトップ、皆川慎一郎取締役部長(39)、3年前結婚するまでは『鬼の皆川』と呼ばれるほど近づきがたいオーラをまとっていたのに、結婚後はそれが嘘のように人が丸くなり、自他共に認める愛妻家
しかも、1歳になる娘さんには、親バカ炸裂なんだと自分でカミングアウトしていた
しかし、仕事に厳しいのには変わりなく、みんなが程よい緊張感を持って仕事しているのが分かる


そんなこんなで、私は正式に海外事業部第3課に配属される日がやってきた
皆川部長から辞令を受け取り、改めてみんなの前で挨拶した


「今日から、海外事業部第3課に配属になりました、加納海青です。ご迷惑おかけすると思いますが、よろしくお願いします」


頭を下げると、パチパチと拍手が聞こえてきた


「まだ不慣れなことがあるだろうから、みんなで加納課長をフォローしてやってくれ。じゃみんなは仕事に戻って。加納課長、ちょっと」


皆川部長の言葉にみんなはデスクワークに戻っていった
私は部長の席へ向かう


「社長に挨拶しに行くぞ」
「は?」
「ああ、うちの課長達は社長に直接会って打ち合わせすることもあるから、その顔合わせ。社長も君と話してみたいらしいぞ」


私が相川課長や神崎課長を伺うように見ると、2人は素敵な笑顔で私を見ていた
神崎課長に至っては手を振っている


「ほら、行くぞ」
「あ、はい」


社長室は、役員室、秘書室と共に、海外事業部の1つ上のフロア、16階にある
皆川部長の後をついて階段を登って行く


「加納課長は社長と話したことはあるのか?」
「いえ、入社してから1度もそんな機会はありませんでした」
「そうか。あの人は悪い人じゃないが、少々曲者だから気をつけといた方がいいぞ」
「曲者?……ですか?」


そんなことを話していたら、秘書室に着いた
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