鉄仮面女史の微笑みと涙
「海青、あんたと透吾さん、座敷で寝てもらうけん。布団座敷に置いとるけん、透吾さんお風呂入っとる間に敷いときよ」
「え?私の部屋は?」
「もう物置になっとるわ。早よ敷いてきなさい」
「は〜い」


まさか親に彼氏と一緒の部屋で寝ろと言われるとは思わなかった


「まあ、いい歳の大人だもんね。心配することもないか」


布団を敷いていると、透吾がお風呂から上がってきた


「海青、お母さんがお風呂先に入れって」
「あ、うん。これ終わったら行く」
「手伝うよ」
「いいよ。透吾、お客さんだし」
「2人でやった方が早いだろ?」


そうして透吾も手伝ってくれて布団を敷き終えた


「よし。手伝ってくれてありがとう。私、お風呂入ってくるね」
「ああ。ゆっくり入って来い」


ん?と思って透吾を見た


「どうした?」
「いや、今まで『ゆっくり入って来い』なんて言ったことなかったから」
「そうか?」
「海青〜。何しとるんね。早よお風呂入りんさい」
「は〜い」


母に催促されて、じゃあと風呂場に向かう
その途中、廊下で母に会った


「お風呂入ってくる」
「うん。ゆっくり入ってきんさい」
「お母さんも同じこと言うんやね」
「え?何?」
「何でもない」


別になんてことないことだけど、何か気になった
でも、まあいいかと思い直して、お言葉に甘えてゆっくりお風呂に入ることにした
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