鉄仮面女史の微笑みと涙
「お母さん、お風呂上がったよ。あれ?お父さんと透吾は?」
「お父さんがまだ飲みたりんち言うて、透吾さん連れて飲みに行ってしもうたわ」
「え?」
「お父さんのあんな楽しそうな顔、久しぶりに見たわ。海青、お茶でも飲むかえ?」
「あ、うん」


注いでくれたお茶を私の前に置くと、母は私の顔をじっと見た


「何?」
「本当に私の産んだ子なんやろかち思ってねぇ」
「は?何言いよんの。私は捨て子やったん?」
「いいや、あんたは私がお腹痛めて産んだ子や」
「何なんそれ」
「その私の産んだ子が、名の知れた大学出て、大きな会社に入って、イギリスに行ってしまうなんてねぇ。何か信じられんわと思ってね」
「お母さん……」
「体、気をつけなさいよ」
「うん」


私が笑顔を見せると、母も安心したようだった
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