鉄仮面女史の微笑みと涙
「それにしてもあんた、いい人に巡り合ったねぇ」
「え?」
「透吾さんよ。あんないい人、滅多におらんわ」
「そ、そうやねぇ」


手放しで褒められると照れてしまう
私はお茶を飲んでごまかした


「さ、お母さんもお風呂入ってくるわ。あんたも座敷に引っ込んどっていいで。あの2人、何時に帰って来るか分からんのやけん」
「ふふ。そうやね。そうさせてもらうわ。じゃお休み」
「お休み」


母がお風呂場に行くのを見送って、私も座敷に向かう
父も母も嬉しそうだった
特に父はずっと透吾と飲んでいて、ずっと喋っていたと思う
久しぶりの実家は、私と透吾を温かく迎えてくれた


布団に入りウトウトしていると、戸が開いたおとがしたの


「……透吾?」
「あ、ごめん。起こしたか?」
「う、ん。今、何時?」
「夜中の1時過ぎ」
「え?そんな時間までお父さんに付き合ってくれたの?」
「俺も楽しかったし」
「ごめんね?」


透吾が私の頭を優しく撫でて、キスをした
初めは触れるだけのキスが、段々深くなっていき、透吾は私を抱きしめた


「っあ……ん」


そのキスが気持ちよくて、私も透吾に腕を回した
しばらくそうして唇が離れると、最後に触れるだけのキス


「続きは帰ってからな」
「……うん」
「お休み、海青」
「お、やすみ……」


そしてそのまま透吾の腕の中で眠りに落ちた
< 68 / 92 >

この作品をシェア

pagetop