鉄仮面女史の微笑みと涙
すると透吾はフッと笑って言った


「プロポーズぐらい、2人きりの時にしたかったから」


そう言うと、透吾は真剣な顔をした


「海青、急だと思うかもしれないけど、俺は海青と付き合いだしてから結婚は意識してた。俺としてももうちょっと先になるとは思ってたけどな。でも、海青がイギリスに行くことになった時、日本を発つ前に絶対籍だけは入れようと思った」
「……何で?」
「もし海青に何かあったら、夫だったら真っ先に俺に知らせが入るから。ただの恋人だったら、俺には入って来ない。そんなのは我慢できない。海青に何かあって、何も知らずに過ごすなんて、考えたくもない」
「透吾……」
「そんなことあって欲しくないけどな。でも今、どこでテロとかあってもおかしくないだろ?」
「そうだね」


このご時世、本当にどこで何かあってもおかしくない


「だからイギリスに行く前に、海青を俺の妻にしときたい。ダメか?」


私の顔を覗き込む透吾の顔を見て私は吹き出した


「何だよ」
「だって、そんな自信なさげな透吾、初めて見たから」
「お前なぁ、こんな時に笑うなよ」


呆れている透吾に私は抱きついた


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